表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夜光虫  作者: オータ
19/50

第18話

 40代くらいの男性は、自分でも考えがまとまっていないようで、言葉に迷い、何かを言おうと口を開いては閉じた。

代わりにジャンボが、そっと話しかける。



「今は私があの子の保護者です。縁あって、あの子と一緒に暮らしていた子も共に保護しました。5年前の話です」



 嫌な音をたてる心臓を無視し、ジャンボは努めて冷静に話した。



「5年前……というと9才くらいですか……。あの子がウチからいなくなったのは5才の時なんです……」



 男性は後悔に蝕まれ呼吸を浅くした。

確かにバニラに聞いた話では、彼らが出会ったのは5才の時だ。それから4年間は強盗まがいの生活をしていた。


 ……けれど、今の彼にこの話をどこまで告げていいのだろう。

なにが彼を責めているのか分からないが、ジャンボはひとまず提案した。



「食堂に行って、軽く酒を飲みながら話しませんか。その方がきっとお互いに話しやすいはずですから……」



 男性はジャンボの気づかいに、苦しげな目を伏せてうなずいた。

近くの大衆向けの食堂に向かって歩き始める。

重い空気に耐えかね、なにか話を振ろうと、先導するジャンボが背後に聞いた。



「アナタも今日の結婚式に招待された方ですよね?」

「はい……」



 男性はひとつの言葉を吐き出すのさえも苦しげだった。



「新郎の関係者として招かれていました。ウチは代々……医者の家系で……」



 消え入るような声は本当に消えてしまい、二人はまた無言のままに歩いていた。

無理に話しかけるより、どこかに腰を据えて話した方がいい。


 ジャンボは気がつかない内にどんどん早足になっていた。

その後ろを必死に男性は追った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ