第18話
40代くらいの男性は、自分でも考えがまとまっていないようで、言葉に迷い、何かを言おうと口を開いては閉じた。
代わりにジャンボが、そっと話しかける。
「今は私があの子の保護者です。縁あって、あの子と一緒に暮らしていた子も共に保護しました。5年前の話です」
嫌な音をたてる心臓を無視し、ジャンボは努めて冷静に話した。
「5年前……というと9才くらいですか……。あの子がウチからいなくなったのは5才の時なんです……」
男性は後悔に蝕まれ呼吸を浅くした。
確かにバニラに聞いた話では、彼らが出会ったのは5才の時だ。それから4年間は強盗まがいの生活をしていた。
……けれど、今の彼にこの話をどこまで告げていいのだろう。
なにが彼を責めているのか分からないが、ジャンボはひとまず提案した。
「食堂に行って、軽く酒を飲みながら話しませんか。その方がきっとお互いに話しやすいはずですから……」
男性はジャンボの気づかいに、苦しげな目を伏せてうなずいた。
近くの大衆向けの食堂に向かって歩き始める。
重い空気に耐えかね、なにか話を振ろうと、先導するジャンボが背後に聞いた。
「アナタも今日の結婚式に招待された方ですよね?」
「はい……」
男性はひとつの言葉を吐き出すのさえも苦しげだった。
「新郎の関係者として招かれていました。ウチは代々……医者の家系で……」
消え入るような声は本当に消えてしまい、二人はまた無言のままに歩いていた。
無理に話しかけるより、どこかに腰を据えて話した方がいい。
ジャンボは気がつかない内にどんどん早足になっていた。
その後ろを必死に男性は追った。




