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悪役令嬢が魔法少女?  作者: まきえ
悪役令嬢が魔法少女?と思ったら何故かコロシアムに転送されて魔法少女同士でロワイアル?
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06.進め!さもなくば


 近衛兵の案内で『寄宿城』に到着したレベッカは、自身に当てられた部屋を眺めで驚愕していた。


 間取りこそは違うが、故郷ゲーナインでの自室に限りなく近くルームコーディネートされており、聖都に到着するまでに買い漁った物も滞りなく収納されていた。


 いくら馬車で先に到着したからと言って、荷台を急遽2倍に増築するほどの荷物を運んでいた。


 クローゼットを開けても、戸棚を開けても、全てがすべて、丁寧な仕事で収められている。


「あ、ありえない。これが聖都の執事のレベル・・・・・・」


 故郷で彼女に仕えていた執事とメイドも丁寧な仕事をする優秀な人材だったが、上には上がいる。もはや、見習わせようとか考えるのが野暮なほどの能力差をまざまざと見せつけられた。


「――あ、あの。失礼します」


 開けっ放しにしていた自室の入口に、一人の少女が立っていた。


「あなたは、確か――」


 先程、大通りでマグライトに買われた行商人の娘。


「さ、先程はお見苦しいところを、お見せ、してしまって、・・・・・・」

「いや、いいのよ。あなたのせいじゃないだろうし。ところで、何用でここに? あなた、マグライトのメイドになったのでしょう?」


 まさか、もうクビになったのかとレベッカは心配顔をしている。だが、


「い、いえ。マグライト様からレベッカ様にこれを、との言いつけでして・・・・・・」


 少女の手には一通の手紙と小さな横長の木箱があった。レベッカが両方を受け取ると、手紙を開く。


-------------------------------------------------------------------


コクトーの面汚し田舎娘へ


 あなたのおかげでいい侍女を見つけることができたわ。その礼として、今回の無礼は見逃してあげる。感謝することね。

 あと、あなたがより大恥をかかないように手を打ってあげましてよ。これも感謝するといいわ。

 木箱の中身はほんの気持ちよ。もっとも、あなたには魔法は使えないでしょうけどね。


 最高級の令嬢 マグライト=ドグライト=メーガスより


------------------------------------------------------------------


「・・・・・・なんて品のない手紙なのかしら」


 レベッカの横で、使いに出された少女も苦笑いをしている。木箱を開けると、根本に小さな赤い石が埋め込まれた杖が収められていた。


「魔石付きのマジックスティック、とのことでした」

「余計なことを。これも、どうせ何か裏でもあるんでしょ?」


 人前でこれを出すと、マグライトの施しを受けた田舎者、とでも言われるんだろうと悪態をつく。


「今回の式典に確実に必要なもの、のようです。あとは封書を読めばわかる、と」

「そ。まあいいわ。みんなして封書封書って、いい加減わかったわよ。あなたも、私はこれから着替えるの。用が済んだのなら、帰っていいわよ」

「あ、はい。ありがとうございます。これが初めてのお仕事だったので、・・・・・・わたし、上手くできていましたでしょうか?」

「私に聞く時点で大したことないわね。そこは飼い主に聞きなさいな」

「あ、そうですよね。すいません・・・・・・」


 しょんぼりとした少女を見て、レベッカが頭を掻く。


 彼女の雰囲気がふんわりとしていて、どうにもペースがうまくいかないようだ。


「まあ、落第点ではないわよ。ちゃんと荷物も届けたしね。ありがとう、ええっと、名前なんだっけ」

「あ。すいません、名乗り遅れました。レント。レント=ソイズと申します」

「そう。ありがとうね、レント。もう下がっていいわよ」

「あ、はい! ありがとうございます! 失礼します!」


 レントが満面の笑みをして、レベッカに深々と一礼して去っていく。


 最後までふんわりしていて、レベッカとしては調子が上がらない様子だった。


「さて、とにかく着替えて封書ね」




「――な、なによこれ」


 汚れたドレスを脱ぎ、時間は少なかったが軽くシャワーで汚れを落として急いで着替える。


 何にしようかと考えている時、封書の内容にドレスコードがあるかもと、下着姿で封蝋を外し、中身を開いた。


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第一級国家魔法少女選出者に告げる


 レベッカ=クワッガー=エーデルフェルト=ボガード(No. 108)妃 にこれより今回の第一級国家魔法少女の選抜対象者に任命し、国王の定める元に聖都クーゲルスへ招集する。


 対象者には国王の加護を授け、聖都までの渡航、聖都内での生活のすべてを保証し、特殊国家資格となる『第一級国家魔法少女』の選出資格を付与する。また、選出貴族一族には半恒久的な非課税の支援を行うものとする。


 上記の者が今回の招集を拒否する場合、選出貴族一族の永久的権力剥奪及び、統治民の二割の増税を五年間課す。この増税に関する免税及び、減税は不可とする。


 選抜における式典のドレスコードは不問とするが、各自礼装・武装の調達を滞りなく完了すること。


 なお、選抜における本過程において過失・故意・事故等について一切の法的範囲を排除するとともに、保証の一切はいかなる事情があろうと一律であるとする。


 選出者総員、己が最善を尽くし善処せよ。


-------------------------------------------------------------------


「い、意味不明過ぎる・・・・・・けど」


 ――なんて()()()内容だ、がレベッカの心に思うところだった。


「各自で礼装・武装を整えるって、殴り合いでもしようっての?」


 ましてや、式典の場で、である。ペラ一枚の通達にしては、あまりにも内容が不穏であり、あからさまに()()()()()()、救いのない有様が、『徴兵招集』のようであった。


 レベッカには第一級国家魔法少女の『抜擢』ではなく、『選別』というのが引っかかる。文章中では、選出と選抜が混同されているが、あえて使い分けている節すら感じる。


「ドレスコードはないようだけど、この様子だと、『ドレス』だと厄介そうね・・・・・・」


 空中庭園にいた令嬢たちは『勝負ドレス』と言わんばかりに綺羅びやかなものにしていたが――



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