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悪役令嬢が魔法少女?  作者: まきえ
悪役令嬢が魔法少女?今度はバトルアリーナでロワイアル?

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20.はじまりの合図


 ――『三ツ子島』北部、【黄】本陣・大コア地点。


挿絵(By みてみん)


「――さてと。転送が終わったってことは、もう予選は始まってるってことですね」


 大型のハルバードを手にした騎士教団3位のジャンヌ=ジェンヌ=マルタ。槍、斧、ソードブレイカーの用途を組み込んだ重量のある武器で、通常のものよりもわずかに大きい。重さも倍ほどはあるだろう。だが、それほどの武装を涼しい顔で担いでいた。


「まずはどう動きましょうか。我々のいる位置も気になります」


 事前に公表された情報は島の全容だけであり、どの組がどこに飛ばされるかまでは記されていなかった。どの方向にどの色の組がいるかも知らぬまま、その動向は各々に委ねられている状況である。


「場所はともかく、大コア地点を中心に左右に別れれば、そのうちどこかとは接敵するはず。あとは誰が出てくるかだけど、そればかりは神のみぞ知るってとこだ」


 ジャンヌと同様、騎士教団関係者であり、騎士教団1位のペンドラゴンの分家出身者であるバラライカ=キゼオ。ジャンヌとは違い、やはりジェノムのように騎士然としている。


最適解(セオリー)ならば、左右に二組ずつがいいだろう。カバーしあえる陣形を考えるなら、内側二組をより強い方にする方が良い」

「バラライカの言うことは合理性はありますが、『小隊』システムとしては、我々【黄】は他組より人手が足りない。それに、上と下の差が一番大きい組でもあります。これではワタシの『神託聖女(オラクル)』でもカバーしきれませんよ」


 ジャンヌが言う通り、【黄】は『小隊』システムの枠組みで考えるならば破綻している。4組中2組が『小隊』を完成させきれておらず、追従者の2名はどちらも正体を明かすことを拒んでいた。敵となる他色からすれば、手の内を悟られないアドバンテージになるが、仲間にまで姿を隠す以上、セオリー通りの戦略の組み方は叶わない。



「騎士2人で勝手に進めてるんじゃねぇよ。相手が誰であれ潰せばいい。足手まといはいらねぇ」


 ヴォニカ=ワルプルガ=ヴァルプルギスが口を開く。『空中庭園』に到着してからずっとイライラしていたヴォニカは、その感情をある一人にだけ向けている。早く殺した、その一心であり、第2予選が正式に開始しているのにスタート地点でグダグダとしていることが許せない。


「仲良しゴッコがしたいなら勝手にしろ。一人で行く。カバーも知らん。レベッカさえ殺せればどうでもいい」


 話し合いも拒絶し、ヴォニカが一人先を進む。【黄】の大コアから見て左方向。そこが【赤】かどうかの確証もないが、ヴォニカ自身それもどうでもいい。その先が【青】ならば、そいつを殺して【赤】に移るだけだと。


「あぁ・・・・・・。行っちゃった。あたし、あれに付いて行かないとダメ?」


 置いてけぼりにあったヴォニカのペアであるハクア=ザクロ=ドクロティ。魔法少女として第1予選は突破しているが、ドレスアップには至っておらず、【黄】内での実力は下の方であると自覚している。性格に難のあるヴォニカとペアになったこと自分のことを心底呪っており、【黄】内ですら協調性が見られない様子に落胆している。


「ほうっておけ。ナターシャ、あんたはどう思う。このままでは我々は戦う前から崩壊するぞ」


 バラライカが転送を終えてから、一度も口を開かなかったナターシャ=マクガフィンへと問いかける。第1予選同様、腕を組み、終止不機嫌な表情を崩さない。


「勝手になさい。貴女達の尻拭いはゴメンだわ」


 ナターシャはそれだけを言い、ペアであるイータ=レッドウッド=ヨークと自らが選出した者を率いて歩きだした。方向はヴォニカとは別の大コアから見て右方向。


 最短で目的を終わらせる。それだけは、ナターシャもヴォニカも同じ心意気であった。その矛先が誰かは別の話ではあるが。


「あらら。ナターシャも行っちゃいましたね。ならケツ持ちはワタシがしましょう。人数が減った分、『神託聖女(オラクル)』の恩恵も十分でしょう」


 ジャンヌが担いでいたハルバードの石突を地面に打ち立てる。重い音が響き、その衝撃で空気が僅かに揺れた。


「なら先はこちらが受け持とう。小コアが陥落した場合、全員早急に後退。大コア地点(ここ)に集合し、防衛戦に移行する」


 バラライカが手にしている拳ほどの大きさの魔石こそ、第2予選における小コアであり、各小隊に一つずつ配布されている。【黄】ではナターシャ、ヴォニカ、ジャンヌ、バラライカがそれぞれ所持しており、他色も同様に誰かが隠し持っている。



「一つ、質問いいかしら。敵側がこちらの小コアを無視して大コアに接近した場合、それを止める術はどうする気?」


 ジャンヌのペアであるノイン=テイル公女からの質問。『竜の夜』の招待状と一緒に配布された第2予選のルールには、あくまでも小コアと大コアを守ることしか記載されていない。


 小コアを破壊された小隊は一時的な拘束を受け、敵はその隙を狙って大コアへと接近すると考えられるが、ノインは別にそれを守る必要性はないと考えていた。


「ワタシもそれを考えましたが、それはなさそうです。小コアを持てばわかると思いますが、大コアに対して強い魔力の流れがあります。小コアを所持している者だけが視認できるものです。これにより大コアは何らかの形で護られている」


 ジャンヌがノインに小コアを手渡すと、ノインの視界に4本の魔力の流れが知覚できた。自らが持つ小コアと、バラライカから。そして、すでに視界からは消えていたヴォニカとナターシャがいる方向から大コアに向かって流れている。


「誰かしらの小コアの生存確認はこれでできる、ってことでいいのかしら」

「そうなるな。誰が持つかも重要だが、我々のチームワークはすでに崩壊も当然。当面はヴォニカとナターシャの小コアを気にしつつ、戻るべきときには防衛戦に徹し、カウンターを取ることにしよう。正攻法とはいかないが、幸運にもナターシャは()()だ。攻めはあちらに全振りしていいはずだ」

「バラライカの戦法でいきましょう。防衛戦ならば、ワタシの領域です」


 ジャンヌが自信満々と胸板を叩く。


 苦しくも【黄】組の戦法が確立した。ナターシャとヴォニカの間を広くカバーしながら索敵し、状況が劣勢になれば防衛戦、優勢に転じれば一気に相手の大コアへと襲撃する。




 チーム【黄】、――状況開始。






 ――同時刻。『三ツ子島』南東部、【青】本陣・大コア地点。


挿絵(By みてみん)


「はっきり言って、【青】はハズレくじだ!」


 堂々と声を張り、ネガティブなことを口にしたのは王立聖家4位のアリアーナ=グランディーバであった。今回の『小隊』システムを滞りなく完了させ、人数的に有利である【青】の組ではあるが、その面々を前にして豪語する。


()()だ! このチームは全てにおいて半端でしかない! 正面から攻めては確実に潰されるぞ!」


 彼女の言う『半端』とは――家柄も含めて、実力不足の集まりということだった。


 【黄】には王立聖家1位のナターシャ=マクガフィンがおり、【赤】には騎士教団1位のジェノム=フェルト=ペンドラゴンがいる。脇を固める面子も隙がない。【青】においても遜色ない実力者が揃っているが、特出している部分がなく、突破力のなさを嘆いていた。




「王立聖家とあろう者がこんな後ろ向きだなんて情けないわ。アリアーナ。あなただって雑魚じゃないし、ここにはアラガミ様の施しを受けたこのアユーニャがいる。この組は決して弱くなくってよ」


 戦う前からネガティブなアリアーナに対し、強気な発言をしたアユーニャ=D=フォース。彼女に帯同する第一級執事のラチェスター=エルドランはそれに賛同し、一人拍手を送っている。


「先の闘技場(コロシアム)とは違い、戦略も戦術も求められるのがここでの戦いなはず。正面からガチンコだなんて、とんだバカの戦い方よ」

「アユーニャ。お前は優秀な神憑り(シビュラ)だが、理を知らない。『神託聖女(オラクル)』持ちのジャンヌもやっかいだが、マグライトなんて好色ゴリラ。正面で暴れられるだけで、ただでさえ面倒な奴らなのに、【赤】にはよりによって()()()()()()。奴とジェノムが揃っている以上、戦略も戦術もない。【赤】を打破するのは至難の業だ」

「なら、【黄】を潰せばいい。確かにナターシャの空間魔法はあのサラが突破できなかったくらいには厄介だし、ジャンヌは鉄壁。だが、それしか知らないバカじゃないし、それ以外なら出し抜き方はいくらでもある」



「姉さまを愚弄したのなら、ここでアナタを殺すわよ、アユーニャ」


 苛立ちを隠せず、ココ=アンデルセンがアユーニャに詰め寄る。クオラン家より分家であるアンデルセン家に養子に出された、サラの実の妹である。戦場を駆けて日に焼けた赤髪のサラと違い、小柄で薄い紫色の髪と白い肌が目立つ。


「愚弄ではなく客観的事実よ。サラの敗因はナターシャを過小評価したことと魔法を正面突破できると思った騎士の驕り。()()彼女なら、それがよくわかっているはず。敗者ですら、生きているのなら強くなれるのだから恨むのではなく感謝する気概をみせなさい」

「わかった。やっぱりアナタから殺すわ。首を出しなさい」


 ココが腰に携えた剣を抜く。それよりも速く、アユーニャの前にラチェスターが出る。構えられた大盾の奥から、鋭い眼光で睨みつけた。


「どきな執事。野郎の出番なんてないわよ」


 それでも殺意を隠そうとしないココに緊張感が奔る。


 すると、――目深くフードを被った者がココの前に立ち、制止した。ココの『小隊』に帯同したその大柄な者が、言葉を一切発さずに、しばしの沈黙の後にココが剣を鞘に戻す。


「・・・・・・いいわ。組内で潰し合っても一切の得にならない。それに、【(ここ)】ではワタシの立場はないもの」


 多くのものが王立聖家に起因する者が揃っている【青】において、ココ=アンデルセンだけは立場が低い。分家の身である以上、発言権がないことは始めからわかっていた。拝水教団より選出されたアユーニャもギュンスター家の直系であり、事は王立聖家が望むように進むことは明白だった。


「あまりこの場では立場だとか振りかざしたくないけど、トラブルになるなら使うぞ、ココ。作戦を立てる場では従え。その鬱憤は別の組に向けろ」

「ならワタシを【黄】に向けさせて。姉さまの仇よ」


 サラの仇とは、――第1予選最終ピリオドを勝ち抜いたナターシャ=マクガフィンに他ならない。右足を負傷させられ、左腕を切断するほどの大怪我を負ったサラの仇討ちをと息巻く。


「――あ、消去法使っていいなら【赤】がいいわ。マクガフィン宗家とは当たりたくないし」


 話を静かに聞いていたグニス=レーが手を上げた。マクガフィン家筆頭分家であり、メリーやヴォニカと同様にフリルをあしらった黒いドレスを着ている。


「ふむ。相性としては悪くはない。ならアユーニャも【赤】に行きな。お前のアラガミがあれば、幾分かマシになる」

「あなた、リリィと当たりたくないだけじゃなくて?」

「冷静に考えれば、リリィに対処できるのはアラガミくらいしかいない。それに、カガリのカウンターにもなる。【赤】に対する最適解はお前だけだ」

「はいはい。わかったわ。可愛い妹分に手をかけるかもしれないけど、それすら押し付けるのね」

「ものは言いようだが、勝ちたいのならそうしてくれ。では、そろそろ進もう。地図によれば、先に向こう側に通ずる橋を制しなければ勝率が下がる」


 『三ツ子島』はそれぞれの組がいる場所は崖と流れの早い川によって分断され、3つの孤島が橋によって繋がっている状況である。アリアーナの言う『橋を制する』ことこそが、この第2予選における重要な課題であり、他の組もそれを第一目標としていた。


「ココ組ならもう動いたわよ、アリアーナ」

「はぁあ!? まったく騎士ってのはせっかちか!」


 すでに【青】の大コアからみて左側――島の北側へ走り出していたココ組の後ろ姿が小さくなっていた。その方向が【黄】という確証はないのに、迷わない選択。奇しくもその選択は間違いではない。


「違っているのならどっかでスイッチすればいいわ。向こうもどこと当たるかわからない以上、確率は四分の一。こっちに有利になるようにアラガミ様にお祈りしておくことね」

「嫌味か、アユーニャ。まあいい、無事に合流できることを願ってるよ」


 アリアーナがペアであるウィンクル=リップルと『小隊』に帯同させたリッケンバッカー=ファニヴァニを連れてココの後を追った。大コア地点に残されたアユーニャ・カグヤ公女組とグニス・アーデルハイト組も動き出した。




 チーム【青】、――状況開始。






 ――同時刻。『三ツ子島』南西部、【赤】本陣・大コア地点。


挿絵(By みてみん)


 煌々と輝く大コア。小コアを持つレベッカ、カガリ、リリィ、そして騎士故に『種無し』で魔術特性が皆無なジェノムが異質な魔力を知覚した。


「なるほど。大コアが小コアと紐付き、強固な障壁を纏っているのか。これが魔法、ワタシでも知覚できるとは感服だ」


 初めて肌に感じる魔力。小コアをもっているだけで魔法が使えるわけではないが、それでもジェノムにとっては初体験である。


「ベッキーちゃん、ちょっと小コアを貸して。・・・・・・すごいですわね、これ。こんなもの構築してるから子供先生も疲労困憊でしたのね」


 小コアに触れたマグライトは、それだけでこのシステムが如何に壮大で、規格外のものであるかを理解した。小コアと大コアの連動性、小コア所持者に問答無用に知覚させるほどの純度、そして、これと同じものがもう2つ存在している。


「小コアがすべて健在のうちは、おそらく傷一つ付かないだろうね。うちのエンジュウ様やアユーニャのアラガミ様でも欠片も取れないほどガッチガチの魔術障壁だ。小コア一つ程度では、楽に壊せなさそうだね」


 淡い茶色の左目と鮮やかな赤色の右目を持つヘテロクロミアのカガリの分析では、それぞれの小コアから流れる魔力によって、大コアをより強固な障壁で覆っており、小コアが欠落することによりその強度は低下する。


「騎士は魔法は使えないが、物理的にも不可能か?」

「魔術特性がなければ弾かれて終わりですわね。『貫入(かんにゅう)加護(かご)』があっても、さすがに一個は潰さないと厳しそうですわ」


 カガリとマグライトの考えは概ね正しい。小コアが全て残っている状態では、このシステムを運用しているアビゲイル本人ですら大コアは破壊できないように設計されている。魔力により生成された障壁を切り裂く『貫入(かんにゅう)加護(かご)』を付与した『黒』の騎士・エイブラハムですら不可能なほどである。


「動かない的なのに壊せないなんて面倒くさいわね! ならサクッと動きましょうか! とりあえずは小コア一つ壊せばワンチャンありそうじゃない!」

「リリィ、うるさい・・・・・・」


 リリィの大声に、隣りにいたレベッカが耳を抑える。それでもリリィは悪びれる様子はない。


「このまま前進でもいいですけど、的が裸なのは趣がありませんわね。みんな、少し離れてもらえるかしら」


 マグライトの促され、【赤】の大コアから全員が距離を取る。それを確認したマグライトが、体内にマナを取り込んでいく。




「――『(ソウ)(ヘキ)深淵(しんえん)鍋底(なべぞこ)大地(だいち)真紅(シンク)褐色(かっしょく)羽扇うせん』――」




 マグライトの唱える言葉に続いて地鳴りが響き、次第に地面が隆起しだした。大コアを中心に迫り上がった過大な質量となる大地が悲鳴を上げる。





「――『赤壁(セキヘキ)』――!」




 解号により発現したのは、エキシビジョンでアビゲイルが使用した土属性の大魔法『赤壁(セキヘキ)』。巨大な一枚岩のようにドーム状になった大地が、すっぽりと大コアを包み込んだ。


「下準備、完了ですわ。これなら、ナターシャでもアリアーナでも時間稼ぎには十分でしてよ」

「さすがね! マグライト!」

「リリィ、うるさい・・・・・・」


「よし。では次はどう動くかだな。【(ここ)】が『三ツ子島』のどこかも気になるところだが」


 ジェノムの言う通り、どこの組も自分たちが島のどこの位置にいるかは把握できていない。似たような形をしている島だけにあまり気にしている者はいないが、どの島かわかれば地図から微妙な地形の変化を読み取ることはできる。


「ここは、・・・・・・時間帯と太陽の位置から考えれば、南西の島だね」


 ムラサキの分析通り、【赤】は『三ツ子島』の南西部に位置している。


「うーん。比較的橋から近いわね。良いか悪いかは地形次第ってとこか・・・・・・」


挿絵(By みてみん)


 レベッカが地図を広げ場所を確認する。他の組と比べれば、隣の島に通じる橋まで直線距離で見れば近い位置にある。問題は近場にある隆起した地形。配布された地図では正確な地形を読み取ることは難しいが、回り込まないと橋に辿り着けそうにない。


「ふむ・・・・・・。南西部だと、リリィの機動力を活かせない、か。残念だが、『遊撃妃』の真価は出せそうにないな」

「そんなのはあんたが決めることじゃないわ! ジェノム! リリィ様に不可能はない!」

「リリィ、うるさい・・・・・・」

「はいはい。リリィは好きに動くと良いですわ。悪く見積もれば、ワタクシたちが橋に到着する前にあちら側に越えられているはず。ストレートに進軍と少し回り込んでの斥候が必要ですわね」

「北も東もどの組かわからない以上、相性問題は今に言えることじゃないな。東側は橋の手前は割と狭い。正面突破が有利ならばワタシが行こう。レベッカ・ムラサキ組とカガリ・フェイ組は北側。魔法少女同士のほうが連携も取りやすいだろう」

「進軍にはマグライトのプレッシャーが欲しい。うちらは斥候を兼ねて回り込もう」


 東側に騎士教団1位のジェノム・エアリス組。北側はマグライトを連れたレベッカ・ムラサキ組が進軍係、カガリ・フェイ組が斥候と裏とり。リリィ・エリザベス組が遊撃係となった。




 チーム【赤】、――状況開始。






 ――すべての組が状況を開始してしばらく。


挿絵(By みてみん)


 【黄】と【青】を繋ぐ橋の上で一人と一組が対峙していた。


「ココ=アンデルセン・・・・・・。てことはこの先は【青】か。ちっ、ハズレだ」


 顔を合わせてすぐにヴォニカが悪態をつく。彼女の狙いはレベッカだけ。すなわち、【青】に興味はなく、この先が【赤】でない以上、より苛立ちがこみ上げる。


「ご機嫌よう、ヴォニカさん。期待にそえなくて残念だけど、『竜の夜』での謝罪がなければ、あなた、ここまでよ」


 『竜の夜』、その会場で聞くに堪えない罵声を飛ばして衝突していた両者。ヴォニカの血の気の多さから、ココの目の前で最終ピリオドにて敗退したサラを愚弄したことで怒りを買っていた。


 誇り高きクオラン家。騎士教団2位であり、分家に出されたココにとっては心の支え。強く、憧れの姉であるサラ。その彼女を否定する人間が許せない。



「くだらねぇ。気に入らないなら黙ってかかってこればいい。なんだ、騎士ってのはいちいち決意表明するってか。くだらねぇな。そうこうしているうちに――」




 ココの視界の端で、異様なものが映った。


 石造りの橋の欄干(らんかん)から、わらわらと小さなものが上がってくる。それは、――足のようなものが生えた、小枝らしきもの。その数は、十や二十ではなく、数百にのぼる。群集となった小枝は、ヴォニカが移動中に準備した簡易式の使い魔。橋の下から相手に気付かれないように移動して、近距離まで接近し突如として襲いかかった。




「――ほうら! 派手に散れッ!」




 ――小枝の群れはもはや黒い影の塊となり、ココ組を押しつぶそうとなだれ込む。咄嗟に、ココの後ろに立っていたフードを着た者がココとピロズを引っ張り、後方へと避難させ、――小枝と接触した瞬間に爆発をした。



「デカブツに感謝しな、ココ! それでも、テメェが死ぬまで少し長くなった程度だけどな!」


 小枝の使い魔に施したのは、――『玉砕(フラッシュ・ボム)』。あえて一つ一つの出力を小さくすることで、使い魔を群集化させ、奇襲において必殺の術式に昇華させていた。目標との接触がトリガーとなり、小枝に貯めた魔力を発火させることで連鎖反応で爆発となる。




 爆煙の先にいるココとピロズに、再び小枝の使い魔たちが姿を現し、今度は確実に仕留めるために取り囲んだ。もはや回避は叶わない。防御しようにも、騎士であるココにその術はなく、魔法少女であるピロズでも十分な強度に至る魔法障壁を出すには時間が足りない。その中、――


「ん。タフだな、デカブツ。まだ生きていたか」


 爆煙の中で、大きな影が立ち上がる。身を隠していた外套は爆発によって燃えていた。その影が、ゆらりと動き出す。




「あ、あンた!? まさか――」


 爆煙の中の影が消え、ヴォニカの言葉よりも速い一閃となる。一条の衝戟。風と共に置き去りにされた殺意に、ヴォニカの首から血しぶきが遅れて吹き出る。


 その一撃は必死の軌道。狙いすまされた()()が、無情にもヴォニカの首をはねた。


「さすがですわ、()()()


 小枝の使い魔が動くよりも速く。ヴォニカの反応よりも速く。術者が死亡したことにより、小枝に施した魔力が飛散した。術式が解かれ、小枝に生えていた足が消えてパタパタと倒れていく。


 焼け落ちた外套の中から、日に焼けて退色した赤髪が見える。研ぎ澄まされた眼光は、(ひとえ)にある人物を見据えたもの。怨讐の(あぎと)が、静かに動き出した。




【青】


 ココ=アンデルセン(クオラン家分家)・ピロズ=ファニヴァニ(グランディーバ家分家)




 追従者:サラ=ブリリアント=クオラン(騎士教団2位)






【黄】


 死亡確認

  ヴォニカ=ワルプルガ=ヴァルプルギス(シシカーダ家分家)


  【黄】残り9名



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