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悪役令嬢が魔法少女?  作者: まきえ
悪役令嬢が魔法少女?今度はバトルアリーナでロワイアル?

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08.杖振りと棒振り


 昼前に行われたエキシビジョンでの高揚が冷めぬ間に行われた第1予選最終ピリオドは、開始の合図とともに鮮血が飛んだ。


 騎士教団2位であるサラ=ブリリアント=クオランは、手にしたサーベルで閃光の様な速度で近くにいた令嬢を狂いなく斬首し、刃についた血を払う。


 ドレスアップすら許さない速度に、刎ねられた首の主は疑問を認識することなく絶命した。


 その傍らで、あまりの蛮行に戦慄する少女。魔法少女としての素質を持ち、他のピリオドであれば勝ち抜くことが可能なほどの実力の持ち主だが、自身に視線を向ける――研ぎ澄まされた殺意の前にたじろいでいた。


「いいぜ、待ってやるよ。この距離なら、オレが今詰めるよりは先にドレスアップできるだろうが、そこの首よりは実力がありそうだ」


 実力ある魔法少女なら、ドレスアップまでは1秒ほどで完了する。自らのスタイルを体現するドレスアップを経れば、この令嬢は十分に戦うだけの能力を持つ。


 だが、目の前に立つ騎士教団の者と比べて、――圧倒的に経験値がない。


 戦う覚悟を立てる前に噴水のように吹き出た血を見たことで、明らかに戦意を喪失していた。


「なんだ、ビビっちまったのか。ならいいや。お勤めご苦労さん」


 そして、慈悲もない剣戟は、一点の狂いもなく2人目の首を刎ねた。




 ――時を同じくして、少し離れた所に立つ王立聖家1位のナターシャ=マクガフィンの前に、ドレスアップを完了した2名の令嬢が、手にした礼装を構えていた。


「ふん。勝ち抜きは『1』だというのに、貴女方は手を組もうという。愚かだわ。どうせこのあと、裏切り合うのが末路よ」


 その言葉に嘘はない。この2人が協力体制を取ろうが取るまいが、仮にナターシャを討ち取ったとしても、そこに勝者はいない。この次に待つのは、互いが勝ち抜くために、もう一度殺し合いを始める。


 それはあまりにも滑稽だと、ドレスアップもせずに腕を組むナターシャが溜息を零した。



「あ、貴女を倒さないと、わたし達が生き抜く可能性はゼロだもの! これはしかたないけれど、必然なことよ!」

「そ、そうよ・・・・・・! ワタシ達の選択は間違っていない!」


「そ。けれど貴女達、だれに口を聞いているのか理解していないのかしら」


 ナターシャが静かにメガネを取ると、――その眼を見た2人が突然歯ぎしりをはじめ、全身を震わせながら、互いに身体を向き合わせた。


「「ああああああああああああああああああああああああああああっ!!」」


 双方の声を重ね、高まり合う声の先に、――互いの身体に礼装を突き刺し合わせて血しぶきを上げる。




 協力しあってナターシャを討つはずだったのに、結局一度もナターシャと戦うことなく霧のように命を散らした。




「――相変わらず、無慈悲で冷酷なことだな。恐るべき選民主義だ。ここまで来たら尊敬すらするよ」


 サーベル片手に近付いてきたサラを一瞥したナターシャは、外したメガネを掛け直した。メガネの奥の眼には、敵意が蠢いている。


「『魅了』の魔眼、ねぇ。慈悲がないのはとてもじゃないがオレの心情とは相容れないな。実力差があるなら苦痛を与えないのが作法だろうよ」

「騎士の作法も矜持も私には関係のないことよ、レディ=クオラン。私の前に立つに値しない者に、慈悲も祈りも弱者の嘆き。総じて消えてくれるに越したことはない」

「いいねぇ、そのひねくれた態度、実に潰し甲斐があるってもんさ。この際遠慮はいらんよな」

「貴女も、今ここで自分の首を刎ねると良いわ」


 サラの殺気を読み、踏み込むための重心移動よりも先にもう一度メガネを外し、『魅了』の魔眼を発動させる。


 視線を合わせたサラに、自害を強要させる呪いが発動した。



「洒落臭い!」


 だが、その呪いすら無効化して、抜身の白刃がナターシャへと襲いかかる。


 ナターシャはそれを自身の前に展開させた魔法障壁で受け止め、うなだれた様子でメガネを掛け直した。


「野蛮なゴリラめ。ここで自死すれば楽だったのに」

「野蛮はお互い様さね!」


 一撃で斬り伏せないと理解したサラは後方へ跳躍し、先程よりも力を込めた突進を持って刃を突き立てる。


 エネルギーを重ねた衝撃が魔法障壁を突き破り、ナターシャの心臓へと疾走した。



「まったく。命は大事にするのが騎士だと思っていたわ。けれど、私にドレスアップさせるのだから、楽には死ねないわよ」


 サラの刃がナターシャの身体を貫いたと思われた刹那、あるはずの手応えが消失する。そして、サラの後方に移動していたナターシャが、不届き者に鉄槌を下すべく、全身を光で包み、ドレスアップを施した。


「光栄だね。本気を出してくれるのかい」

「本気? 驕れるんじゃないわ。ドレスアップ程度が本気だと思わないことね」


 全身を包んだ光が消失した頃に、ナターシャを漂わせる雰囲気が一変する。


「なんだ。ドレスアップとは名ばかりかい? ()()()()()()()()じゃないか」


 そう。ナターシャの装いは何も変わっていない。


 黒に近い深い藍色のドレスのまま、装飾も増えず、礼装も武装もない。


 ただ、彼女を覆う魔力の質だけが、激変している。


 それに対して反応ができないのは、サラが魔法についての知識がないため。


 アリーナに立つものが他にいれば、ナターシャのドレスアップが完了した時点で戦慄するほどの恐怖をまとっていた。


 

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