4月3日 フクシャピンク
4月3日
フクシャピンク
Fuchsia Pink
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R:245 G:160 B:189
4月3日 フクシャピンク
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何だこれは! いかん、いかんぞ、これでは。
私は、先ほど弟子が受け取ってきた図版の原本を確認し、軽い眩暈を覚えた。
まったく伝わっていないではないか。
私は、画家たちに対して怒りを覚えずにはいられなかった。
が、これまでは、図版と言っても、実物を見ずに描いたものだったり、画家の勝手な空想で捏造されたり、あるいは、違う種類の植物を描いているのにも関わらず確認を怠ったり、花しか描かれておらず葉や茎や根、さらにはその実などとの繋がりが一見して分からないものだったりで、使えないものが多過ぎたのだ。
画家たちにとっても、図版を描く仕事など、取るに足らない内職のようなものという意識があるのだろう。
実際、彼らにとっての大仕事とは、教会から依頼された宗教画であったり、大貴族から依頼された肖像画であったり、新しく建てられる建造物の壁に描く歴史画だったりするのだ。
これでは駄目だ。
私の理想とする図版を描かせなければならない。
まず、実物を詳細に観察し、そして勝手な小細工をしてはならない。そして、花だけではなく、葉の形、葉の付き方、茎から分かれる枝の伸び方、さらに根、できればその実や種子が1枚の図版に収まるように描くのが理想だ。
誰が見ても、実際の植物と図版とが一致するようでなければ、図版の意味が無い。
まずは、画家たちの意識を変えさせなければならない。
これは、歴史に残る、いや歴史に残すべき大仕事なのだ。
優れた図版は、今後長きに渡って、多くの植物学者、学生、さらには植物から優れた薬を得るための原料集めに欠かせないものとなるはずだ。
私は、もう一度、弟子を呼び、画家たちを集めるように指示した。
写真は、アカバナ科の植物フクシアの花。
フクシアの花の色のピンク色。
フクシアは、アカバナ科の植物で、下向きに垂れ下がった花が特徴です。鮮やかなピンクや紫の花が多いですが、園芸種は多種多様です。倒挂金鐘とも呼ばれます。
フクシアの名は、ドイツの医師であり植物学者であるレオンハルト=フックスにちなみます。
フックスはその業績から「ドイツ植物学の父」の1人に数えられています。
1542年の本草書『植物誌』(De Historia Stirpium Commentarii Insignes)は、それまでの文献を参考にしながら植物とその薬効を簡潔に説明し、さらに薬草以外の植物についても記載、植物学の発展に寄与したとされています。
なかでも、フックスがこだわったのが図版。
当時は画家が勝手に絵を変更するなどして、実際には役に立たない図版が多かったようですが、フックスはかなり厳密にチェックをしたようで、その成果である美しい木版画は現在に至るまで、歴史的な価値を含めて賞賛されています。