3月22日 ディープモーベット
3月22日
ディープモーベット
Deep Mauvette
#BA64A0
R:186 G:100 B:160
3月22日 ディープモーベット
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「では、明日は予定通りに。」
そう言って、部下が部屋から出ていくのを、私は見送った。
明日も、忙しくなりそうだ。
なんと言っても、女王陛下と御一家が会場へと御出ましになるのだ。
警備の担当者も最終確認で飛び回っている。
「女王陛下は、新しい御色の衣装を召されるらしいぞ。素晴らしく美しい、そして我が国の科学技術を象徴する色らしい。」
どこからか情報を得てきた職員が興奮気味に話している。
「クリスタルパレスの前に御立ちになった御姿を想像するだけでも、わくわくするよ。明日で、我々の万国博覧会の成功、いや大成功が決まるんだなぁ。」
そう、なんとしても明日の御出ましは、成功させなければならない。
私も、もうひと踏ん張りだ。
そうして、カップに注がれた紅茶に口を付け、ビスケットを流し込んでから、残っている書類を片付けにかかることにした。
写真は、ウスベニアオイの花。
ゼニアオイ、コモンマロウ(ウスベニアオイ)、タチアオイの花の紫色。
19世紀、アニリンからマラリアの薬キニーネの合成を試みたイギリスの化学者パーキンは、偶然鮮やかな青紫の色素を生み出しました。
この色素にアオイの花から付けられた名前がモーブ。アニリンパープル、モーベット、マローという呼び名も生まれました。
ヴィクトリア女王がこの染料で染めた絹のガウンを着用したという記録があるようです。
万国博覧会のスタッフに当日の衣装の情報が漏れていた、かどうかは不明です。
創作上の設定です。