3月11日 砥粉色
3月11日
砥粉色
とのこいろ
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R:244 G:221 B:165
3月11日 砥粉色
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光悦の幻の書が見つかったらしい、という、まことしやかなうわさが囁かれているのは知っていた。
しかし、そんなものは、時々湧いて出てはすぐに消え去る幻にすぎないと、私も話半分くらいに聞き流していた。
ただ、内容が刀剣関係に関わる手紙類らしい、というのが、そのうわさの一番気になる部分だった。
光悦は、刀剣の鑑定、研磨、浄拭を家業とする京都の本阿弥家の血筋であり、実際、加賀藩前田家との繋がりも持っていた。
が、これまで、光悦は書家として有名過ぎるほど有名であり、手紙類もそこそこ残っているが、家業である刀剣関係に触れる内容が書かれた手紙というものは知られていない。
光悦は、様々な芸術に関わっているのであるが、家業との兼ね合いをどうしていたのか、いまだに謎とされているのだ。
確かに本家ではない。父が本家から出ているからだ。
しかし、父は刀剣に関わっていたのは間違いなく、そして光悦は帳外にされたというわけでもない。
気になるところではあるのだが、こういったうわさは、やはりうわさで終わってしまうことが多い。
はじめてうわさを聞いたのが確か半年くらい前だった。
そこから進展も無かったことから、私もその話については忘れかけていた。
そんなタイミングで、妙なことを聞くことになった。
「砥粉を譲ってくれだって? そんな依頼をしてたっていうのか?」
「何か、茶碗か、それとも漆の方か、混ぜて材料の一部にでもしようと試みたのかもしれん。結構な量を譲って欲しいという内容の手紙だと聞いた。」
「本当か?」
「さあな。実物を見せてもらったわけじゃないからな。誰かの冗談だったっていう話だとしても、俺は驚かないね。だって、何でもアリだろ。騙された方が修行が足らんって平気で言っちまう世界だぜ。」
信じるか信じないかは本人の自由。あるいは自己責任が、この世界の常識なのは確かだ。
写真は、砥石。
包丁を研いでいる様子。
明るい灰色がかった黄色。
砥石で刃物を研いだ時に出る砥石の粉、 砥粉に由来する色。
砥粉は刀剣類を磨く用途の他に、白木の化粧や漆器の下塗りにも使われていたようです。
本文は、もちろんデタラメですよ。
光悦のお茶椀、書、蒔絵、何か出てきたら、国宝か重文かっていう感じですから。
偽物も色々あったことでしょう。