2月21日 ライムライト
2月21日
ライムライト
Limelight
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2月21日 ライムライト
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古き良き時代。
これは、そんな言葉で表現された時代の昔話さ。
俺たちの住む小さな街に、劇場ができたんだ。
それまで、娯楽と呼べるようなものは、酒場でのちょっとした余興だったり、仲間内でのトランプ賭博だったり、年一回の秋の収穫祭の時期にやってくる旅芸人の見せる大道芸だったり。まぁ、そんなところだった。
しかし、劇場ができて、定期的に公演が行われるようになると、それらを見に行き、新しい演題について意見を述べたり、出演者の出来不出来をあれこれ言うのが住人たちの常となっていった。
新しい話題に乗り遅れまいと誰も彼もが公演スケジュールにはチェックを入れていたし、女優の衣装を真似た服や化粧が若い娘たちに流行ったりした。周辺の街に劇場が無かったこともあって、評判の高い演目の上演日には他所からの客も増えていった。
街には新しい宿屋ができ、観劇を終えた客たちをもてなす飲食店や酒場も増えた。他所からの客向けに土産物を売る店、流行の服を作る仕立て屋の店、人気の女優や俳優のブロマイドなどを取り扱う店なんかもできた。俺たちの小さな街は、好景気にも助けられ、次第に、その規模を大きくしていったんだ。
劇場の灯りはライムライト。
あの石灰を利用した独特の強烈な白色光は、今ではもう見ることがなくなっちまったが、当時は、劇場の照明といえば、あの光だった。
そして、あのライムライトの輝きは、俺たちの街の栄光の日々の象徴でもあったのさ。
俺にだって若かりし日ってやつがあった。
どうにか頼み込んで、劇場のいい席を2つ確保して、彼女を誘ったね。
たまたまもらったチケットがあるんだけど、一緒に行ってくれないかい? ってさ。
彼女が主役の俳優のファンでね。
もう、大喜びだったよ。
俺は、ちょっと複雑な気分だったけどな。
当日、目一杯、お洒落をしてきた彼女が眩しくってさ……。
いい時代だったよ。
長くは続かなかったけど。
大恐慌の影響が、ついに俺たちの街にも及んで、街の銀行が倒産。そして劇場も閉鎖となった。
ライムライトが灯ることはなくなり、この街もすっかり寂れちまった。
写真は、ノリウツギの園芸種ライムライトの花。
淡い緑がかった黄色。
ライムライトは、石灰を酸水素ガスの炎で熱して白色光を発する装置で、その白色光の色にちなんだ色をライムライトとも呼びます。
19世紀中ごろに発明され、電灯が発明される前は劇場の舞台照明として盛んに用いられました。
白色電球の普及で20世紀初頭には姿を消し、代わりに、ライムライトは「名声」の代名詞として用いられるように。
チャールズ=チャップリンの有名な映画のタイトルでもあります。