2月7日 モーベット
2月7日
モーベット
Mauvet
#B269A1
R:178 G:105 B:161
2月7日 モーベット
*◇*◆*◇*◆*◇*◆*◇*◆*◇*◆*◇*◆*◇*◆*◇*◆*◇*◆*◇*◆*
10歳の誕生日を迎えるにあたり、ルナは、1匹の紫スライムをテイムすることになった。
これは、この世界における、一種の通過儀礼であった。
単独で低レベルの魔物と相対し、それを従わせ、自由に使役できるようになる。ということは、この世界を生き抜くために、10歳であれば当然身に付けているべき能力と見なされていた。
逆にいえば、それすらできぬ者は、無能と見なされるということだった。
そして紫スライムは低レベルとはいえ、魔物である。
テイムができなければ、攻撃してくる。
それなりに動きは素早く、そして、触れれば皮膚にやけどを生じさせる毒を持っているのだ。
ルナも、初めての訓練時に、その紫色の毒を浴びせかけられ、手足にやけどを負っている。
あまりの痛さに、泣き叫んだが、訓練に付き添った教師は、冷たく言い放った。
「この程度で根を上げるようでは、あなたは11歳の誕生日を迎えることはできないでしょうね。さっさと、お立ちなさい。でなければ、次の毒に晒されますよ。」
ルナは、渋々、立ち上がったが、紫スライムからは、更なる毒が吹きかけられたのだった。
泣いても、誰も助けてはくれない。
それが、最初に叩き込まれた教えであった。
散々痛めつけられた後、ようやく教師は、ルナに治癒魔法をかけてくれた。しかし、こうも言った。
「本番の時に、他者があなたに治癒魔法をかけることはありません。あなたは、止めの合図が出るまで、痛め続けられることになります。それが嫌ならば、強くおなりなさい。持ちものとして許される回復薬も5本までと決められています。あなたのご両親が誰であるか、ということは考慮されません。いえ、むしろ、あなたのご両親が誰であるか、ということで、あなたはより厳しい目を向けられることになるでしょう。」
紫色のスライムによって命を奪われることは、まず無い。
だからこその対応なのであろうが、ルナは、この教師を好きになることはできなかった。
しかし、ルナの両親は、断固として、教師を変更して欲しいとの願いを受け入れてはくれなかった。
母は言った。
「あなたのために、彼女はわずか12歳で1人、この王都に連れてこられたのです。両親とも姉妹とも別れて。彼女はあなたの教師であり、これから先、あなたと共に歩む友として選ばれました。それは、絶対に覆ることはありません。」
ルナは、家族と無理やり別れさせられた4つ年上の教師から、恨まれているのだと理解したのだった。
写真は、ゼニアオイの花。
タチアオイやゼニアオイなどの葵の花の明るい紅紫色。
綺麗な色なのですが、なんだか、毒っぽい感じもするのですよ。
こんな色のスライムが現れたら、警告色と判断するだろうな。