2月6日 ペールライラック
2月6日
ペールライラック
Pale Lilac
#DEBDD8
R:222 G:189 B:216
2月6日 ペールライラック
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「5月になったら、是非、ライラックの花を見にお出で下さいませ。」
そういう文言で手紙は締められていた。
俺は、その言葉に乗せられたわけではないが、5月の半ば、連休も終わって少し人混みもましになっているだろう時期に、札幌を訪れた。
しかし、やはり初夏の札幌はそれなりに観光客が多く、ライラックの花が咲く公園は賑やかであった。
「ふふ。人が多くてうんざりって顔だね。」
相変わらず、心を読んでくるのが得意な娘だ。
「そうでもないさ。連休中はもっと混んでたんだろ? その時期を外して正解だったなと思ったまでさ。」
俺は負け惜しみを言う。そう、負け惜しみだ。本当はもっと早くに来たかったのだ。
「うん。じゃあね、ちょっと待ってね。」
そう言うと、ライラックの花で薄紫の塊ができている部分をじっと凝視し始めたのだ。何をするつもりなのだろうか?
「あ! あった。ねぇ、見て見て。ここ!」
ライラックの花を指指して声を上げる。
「えっとね、ライラックって小っちゃなお花がたくさん集まってるでしょ。で、1つ1つは、先が4つに切れ込んでるの。でも、ごく稀にね、5つに切れ込んだ花が混じるの。これ、そうでしょ。こういう5つに切れ込んだお花はラッキーライラックって言ってね、見つけると幸せになれるんだよ。」
どうやら、4つ葉のクローバーみたいなものらしい。
「良かったな。じゃあ、見つけた彩恵は幸せになれるわけだ。」
俺がそう言うと、彩恵はあからさまにがっかりした顔をした。
「全然信じてないって感じだね。私、待ってたのに。今日が来るの、ずっと待ってたんだよ。」
彩恵の言葉に、俺は少なからず動揺した。いきなり失敗か?
「待て。ちょっと待て。あ、待って下さい。あ~、もう、仕方ないか。」
俺は密かに、人混みから離れた静かな場所がないか探していたのだ。そのため、少しばかり、彩恵の話に集中できていなかったのは確かだ。しかし、ここで失敗するわけにはいかない。
「彩恵さん。これ、受け取ってください。」
俺は準備してきた小さな箱を、彩恵に差し出したのだった。
そして、準備やら何やらで年を越し、今日、ようやくスタートとなる。
彩恵の身に付けたドレスにも、ベールにもライラックを模した花飾りがあしらわれている。
もちろんそれは、すべて5つに切れ込んだ花の集まりなのだ。
写真は、白いライラックの花。
ライラックの花のごく薄い紫色。
ライラックの原種はヨーロッパ南東部から東アジアにかけて約30種ほど分布、16世紀頃からフランスを中心に栽培が盛んになったそうです。
現在では、カナダのロイヤル・ボタニカル・ガーデンズが品種の登録管理を行っていて、園芸品種約2600品種が登録されているそうです。
そのロイヤル・ボタニカル・ガーデンズによると、ライラックの花の色はホワイト系、ヴァイオレット系、ブルー系、ライラック系、ピンク系、マゼンダ系、パープル系の7系統に分類されているらしい。えっと、ヴァイオレット系とライラック系とパープル系ってどう違うのだ?