12月24日 エッグプラント
12月24日
エッグプラント
Eggplant
#241B36
R:36 G:27 B:54
12月24日 エッグプラント
*◇*◆*◇*◆*◇*◆*◇*◆*◇*◆*◇*◆*◇*◆*◇*◆*◇*◆*◇*◆*
あるところに、たまごの工場がありました。
いろんなたまごを作る工場です。
かえるのたまご、うずらのたまご、うみがめのたまご、わにのたまご、にわとりのたまご、あひるのたまご、だちょうのたまご……。ちゅうもんがあれば、さまざまなたまごを作るのです。
「きょうのたまごは、なにかな?」
工場長のさくらさんは、あさいちばんに、こくばんをかくにんするのがにっかです。
きょう作るたまごのしゅるいと数は、こくばんに書かれているのです。
きょう作るたまごは、いそひよどりのたまごでした。「これは、たいへんだぞ。」と、さくらさんは思いました。というのも、いそひよどりのたまごのからには、空色の色をぬるひつようがあるからです。きれいに、むらなく色をぬるのは、とってもむずかしいのでした。
「まずは、空色を作らなきゃね。」
さくらさんは、そとに出て、バケツにまほうの水を入れました。そして、晴れたお空がよく見えるところにバケツをおいて、なかの水にお空の色がうつるようにしたのです。
「まほうの水よ、お空の色をすいとって!」
すると、まほうの水は空色に変わりました。これで、たまごのからにぬる色のじゅんびはできました。
え? お空の色はどうなったか? ですって。
だいじょうぶです。なにしろ、お空は広いですからね。すこしくらいなら、色をすいとられても、色がなくなったりはしないのです。あんしんしてくださいね。
そのつぎに、さくらさんは、いそひよどりのたまごの大きさのかたを、そうこから出してきました。
かたに、たまごのざいりょうを入れ、かたまるのをまつのです。
もんだいは、まほうの水の空色をきれいに、たまごのからにぬるさぎょうなのです。
じつは、さくらさんは、これがにがてなのでした。そこで、さくらさんは、きつねさんにてつだってもらうことにきめたのです。なぜかというと、きつねさんの大きなしっぽは、たまごのからに色をぬるのにやくにたつからです。
さくらさんは、きつねさんにてつだってもらうかわりに、きつねさんのすきな、おいなりさんをじゅんびするひつようがありました。さくらさんは、とうふやさんに、あぶらあげを買いにいくことにしました。
さくらさんは、とうふやさんのおくさんに「あぶらあげを2まいください。」と、たのみました。
とうふやさんのおくさんは、あつあつのあげたてのあぶらあげを2まい、つつんでくれました。あつあつのあげたてのあぶらあげは、こうばしい、おいしそうなにおいがしていて、これだったら、きつねさんはおおよろこびしてくれそうです。
さくらさんは、とうふやのおくさんに「おいしそうなあぶらあげを、売ってくれてありがとう。」と、おれいを言いました。
さくらさんは、いそいで工場にもどり、そして、工場の中のだいどころで、おいなりさんを作りました。おいなりさんの、あまいにおいが工場のそとにながれていきます。
すると、きつねさんが、そのあまいにおいにつられて、森のなかから工場までやってきました。
「とってもおいしそうな、おいなりさんのにおいがここからするよ。」
きつねさんは、よだれをたらしそうになりながら、さくらさんに言いました。
さくらさんは、おおよろこびで言いました。
「おとうふやさんのおくさんの作ったとくせいのあぶらあげで作った、おいなりさんだからね。きつねさんが、たまごのからに色をぬるのをてつだってくれるのなら、分けてあげてもいいよ。」
きつねさんは、大きなしっぽをふってみせました。
「おやすいごようさ。ぼくの大きなしっぽがあれば、たまごのからに、きれいに色をぬることができるからね。」
きつねさんは、おいなりさんをもらって、とてもおいしそうに食べました。
その間に、さくらさんは、いそひよどりの小さなたまごを、かたから取り出しました。かたから、たまごはつるんときれいに、とれました。
きつねさんは、大きなしっぽをまほうの空色の水にひたしました。大きなしっぽで、きように、ちいさなたまごに色をぬっていきます。空色のたまごは、台の上にならべられ、色がかわいてきたら、さくらさんがパックにつめていきます。
とうとう、いそひよどりのたまごが、かんせいしました。さくらさんは、ちゅうもんぬしに、いそひよどりのたまごをとどけるため、パックをやわらかいぬのにつつんで、かごに入れました。
さくらさんと、きつねさんは、かごをもって、森のおくへと歩いていきます。
こんやは、星のおまつりの日なので、森には、ながれ星を見ようと、たくさんのどうぶつたちやとりたちがあつまってきていました。
「あれ? さくらさんときつねさん、そのかごの中にはなにが入っているの?」
「いそひよどりのたまごだよ。」
「お空の色のたまごだよ。ぼくが色をぬるのをてつだったのさ。」
どうぶつたちやとりたちは、かごの中にある空色のたまごを見て、かんしんしました。
「いそひよどりさん、きっと、おおよろこびだね。」
「星のおまつりの日に、すてきなおくりもの。げんきなひなが生まれるといいね。」
みなは、くちぐちに言いました。
いそひよどりのふうふの住むおうちは、森をぬけて、さらにずっと歩いていったさきにある、海の岩場にあるのです。きつねさんは、星のおまつりにさんかするため、ここで、おわかれです。
「きをつけてね。」
きつねさんは、さきっぽに空色の色がついた大きなしっぽをふって、見おくってくれました。
さくらさんは、そこから、いそぎあしで森をぬけました。かごをおとしたりしないようにちゅういしながら、ずんずんと歩いていくと、広い広い海が見えてきたのです。
「さあ、もうひといき。」
さくらさんは、いそひよどりのふうふのおうちへと、さらに、いそぎあしになるのでした。
さくらさんが、海の岩場についたころには、お空は夕方のオレンジ色に変わっていました。
さくらさんは、いそひよどりのふうふに、かごの中のいそひよどりのたまごをさし出しました。
「ああ、きれいな空色のたまご。星のおまつりの日にとどけてもらえるなんて、なんてすばらしいのでしょう。」
いそひよどりのふうふは、さっそく、すに空色の小さなたまごをていねいに、ならべていきます。
「きょねんの星のおまつりの日に、いっしょうけんめいに、おいのりしたかいがあったよ。かわいいひなが生まれるといいなあ。」
いそひよどりのふうふは、こうたいで、たまごをあたためることにしました。
そのとき、暗くなりかけたお空に、ながれ星が1つ、2つとながれていきました。
さくらさんは、ながれ星に、いそひよどりのたまごが、ぶじにかえるよう、おいのりしました。
いそひよどりのふうふも、いっしょに、おいのりしました。
森の中で、星のおまつりのためにあつまった、どうぶつたちやとりたちも、やっぱり、おいのりしたのです。
らいねんの星のおまつりの日には、かわいい、いそひよどりのかぞくが、ふえていることでしょう。
写真は、イソヒヨドリの卵。
エッグプラントとは、卵の工場ではなく、ナスのことです。
色名は、ナスの外皮の色に似た濃い紫色を示します。
ただ、エッグプラントって、もともとは、白い丸ナスのことですよね。たぶん。
思いっきり、ミスリードした掌編、というか童話になってしまいました。
なぜなら、12月25日のバースデーカラーが……。連続させないで欲しかった……。
ついでに冬童話2022のテーマ、「流れ星」までつっこんでしまいました(笑)。
しかし、イソヒヨドリは5月ころに産卵するらしい。季節感ゼロ。作中の「星のおまつり」は、初夏に行われたということにしてください。ごめんなさい。




