表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
336/366

12月1日 亜麻色

12月1日

亜麻色

あまいろ

#D6C6AF


R:214 G:198 B:175

12月1日 亜麻色

*◇*◆*◇*◆*◇*◆*◇*◆*◇*◆*◇*◆*◇*◆*◇*◆*◇*◆*◇*◆*


「すみません。包帯を買いに来たのですが。」

ドラッグストアのバイトを始めて、数週間が経った頃、その客から声をかけられた。


なんか、臭う。

俺は、その時、棚の整理をしていたのだが、客の方から漂ってくるなんとも言えないすえた臭いに、正直、振り返るのを躊躇した。

しかし、客は客だ。そして、さっさと目的の物を購入してもらって、店外へ出てもらった方がいい。

そう判断した俺は、マスクの鼻抑えの部分を隙間が無いように押さえなおしてから、振り返った。


こっちの表情は、マスクのお陰で分かりにくいはずだ。


実際、客の方も、特に気にしている様子も見せなかった。

と言うよりも、見えなかったのだ。

客の顔は、汚れた包帯でぐるぐる巻きだった。顔だけではない、おそらくコートの下は包帯で巻かれているのだろう。緩んで垂れ下がり、足元に引きずられた包帯の残骸らしきものが見える。


「こちらが包帯の棚です。」

俺は、余計なことは言うまいと、慌てて客を案内した。

こりゃ、消臭剤が要るな。幸いというか、店内には消臭剤は売るほどある。まあ、商品なんだが。


「これだけですか?」

客は、そう言った。

「はい、これで全部です。」

俺は、そう答えた。バックヤードには在庫があるはずだが、種類的には棚に並んでいるのが全商品だ。嘘は言っていない。


「どれもこれも薄くて、心許ないなあ。もう少し厚みがあって、なんだったらゴワっとしたような質感のものは無いですか?」

客の好みは変わっていた。そんな包帯、巻きにくくないか?


「すみませんが、そういった商品は扱っておりませんので。」

俺は、マニュアル通りの謝罪の言葉を口にした。


「やっぱり無いか。リンネルの包帯なんて今どき作られてないのかなあ。」

客は、そう言って、棚にあった包帯を全部買っていったのだった。

挿絵(By みてみん)

写真は、亜麻布。


亜麻の茎から採った繊維のような淡い褐色。


最初はドビュッシーでいこうと思ったのですが、さっぱり言葉が出てこず、ミイラ男になってしまいました(酷)。

エジプトのミイラに巻かれた布は、亜麻の繊維で織られたリンネルだったようです。


「亜麻色」と言えば髪、そしてドビュッシー。

『亜麻色の髪の乙女』は、ルコント・ド・リールという詩人の詩から取られた題。

ただ、色素の薄い金髪の色を亜麻にたとえたのは、チャールズ=ディケンズの方が先だったみたい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] こ、これはある意味、ホラー?怖いっ 亜麻色とくればドビュッシーですが、髪の色のたとえとは知りませんでした。 色素の薄い金髪の色……なるほど。勉強になります。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ