10月15日 代赭
10月15日
代赭
たいしゃ
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10月15日 代赭
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「確か、芥川龍之介だったと思うけど、海は青いと信じていたのに実際に海に行ってみたら、海は代赭色だった、っていうのがあったのよね。」
雨上がり間もない川沿いの土手を歩きながら、唐突に、カコがそう言った。
「美しいと思うものも、近過ぎてしまうと、見たくない部分が見えちゃうのかもしれない。海は遠くから眺めているのがいいのかもって思うのよ。」
どうして、こんなことを言うのだろう。私にはカコの伝えようとしていることが、よく分からなかった。
私の、戸惑った表情を見て、伝わっていないことを理解したのか、カコはそれ以上言葉を続けたりはしなかった。ただ、寂しそうに微笑んで見せただけだった。
覚えているのは、土手から見えた、泥で濁っていた川の色。
カコが口にした海の色、代赭色というのは、ちょうどそんな色だったのではないかと思えたのである。
写真は、増水し濁った川。
赤土から作られる天然の酸化鉄顔料の茶色。
中国山西省代県(代州)から産するものが有名であったことから名がついた。
“赭”は赤土のこと。