9月7日 淡水色
9月7日
淡水色
うすみずいろ
#6EBDC2
R:110 G:189 B:194
9月7日 淡水色
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森の中を抜けると、そこには、湖があった。
精霊の血をひく少女の他には、誰も知らない、誰も辿り着くことのできない湖だった。
透明で淡い水の色を湛えたその湖の畔は、少女の休息の場であった。
少女は精霊の血をひく存在である故、街中の雑踏の中の、ふとした悪意に消耗してしまうのだった。
少女は時折、人の群れる場所から離れ、密かに森を訪れ、そして森の奥の深い深い場所を抜け、この湖の畔までやってくる必要があった。
この湖の場所を探り当てたのは、偶然ではなく、少女に流れる精霊の血が導いたからであった。
静まりかえった湖の畔に、1本の倒木が横たわっていた。
そこが、少女の指定席だった。少女は、倒木のベンチに腰掛け、履いていた靴を脱いだ。
柔らかく茂った草の絨毯が、解放された裸足に心地よい。
そして、湖面を吹き渡る風の声を聴いていた。
湖に他の者が辿り着けない理由の一つが、風の精霊による守りの力であった。
風の精霊が発する特殊な波長の「唄」が、人を攪乱し、湖への道へ近付けさせないのだった。
しかし、少女の耳にその「唄」は、ただひたすらに美しく、流れるように聴こえるのだった。
写真は、北海道の青い池。
水の色の淡い青緑色。
写真の「青い池」は北海道上川郡美瑛町白金にある人造池の通称です。