1月24日 鴨の羽色
1月24日
鴨の羽色
かものはいろ
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1月24日 鴨の羽色
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鴨の羽色。
鴨の羽と言われたら、なんとなく、対表面積的に広い範囲の方、つまり灰白色と黒褐色の胴体の方の色を思い浮かべそうなのだけれど、昔の人は、雄の頭の部分の緑色の方が印象的だったようだ。
色名としてもかなり歴史があって、『万葉集』にも登場している。
『万葉集』巻八、一四五一
笠女郎
水鳥之 鴨乃羽色乃 春山乃 於保束無毛 所念可聞(水鳥の鴨の羽色の春山のおほつかなくも思ほゆるかも)
『万葉集』巻二十、四四九四
大伴家持
水鳥乃 可毛羽能伊呂乃 青馬乎 家布美流比等波 可藝利奈之等伊布(水鳥の鴨羽の色の青馬を今日見る人は限無しといふ)
「鴨の羽色」は「青葉」や「春山」にかかかる枕詞なのだとか。
ところで、上の方の笠女郎の歌だが、これ、下の方に載せた歌を詠んでいる大伴家持へ贈った歌らしい。
笠女郎は大伴家持へ29首も歌を贈っているが、大伴家持から笠女郎へ贈られた歌は2首だけ。
なんだか、ちょっとお気の毒。
上の方の歌は、鴨の羽色みたいな青緑色になった春の山の霞がかかった感じに似て、あなたの気持ちがはっきりしなくて、もどかしいです。っていう意味。
笠女郎サン、大伴家持クンの煮え切らない態度に、ちょっとイラっとしたのかも。
下の方の歌は、鴨の羽色みたいな青馬を今日見た人は長生きするね。っていう意味。
なんのことだか分からんよね。
これ、正月7日の宮中行事での歌なんだそうな。白馬の節会という行事。
中国の風習をそのまま導入したもので、陰陽五行思想が関連している。
まず、数字。奇数が陽とされるため、正月7日は、月も日も奇数で、陽と陽。
青という色は春の色で陽。馬も陽の獣。
という感じに、陽で重ねて、その「陽気」に当たって健康になりましょう。という趣旨。
早い話、この歌は笠女郎サンへ贈られた歌ではないの。
同じ「鴨の羽色」という色名を入れてるから、てっきり、お揃いを狙ったのかと思いきや……。
それにしても、青い馬ってなんなの?
実は白馬のこと? 「白馬」の節会だからね。
ところが、どうも黒い馬のことらしい。
昔は、黒を緑って表現する習慣があったそうで、「緑なす黒髪」とかいう表現が代表例。
そこで「鴨の羽色」が登場するという……。
だから上の方に書いた意味は実は正確ではなくて、緑なす黒馬(美しい毛並みの黒馬)を今日見た人は長生きするね。と。
青だか黒だか白だか緑だか、分っかりにくい!
写真は、マガモの雄。結構、カラフルかも。
マガモの頭の羽の色の青緑色。
『万葉集』に登場するくらい歴史のある色名。
でも、「マガモの色って何色?」と聞かれたら、「茶色? あれ灰色っぽかったっけ?」と答えてしまう自信がある。頭の部分だけの色を思い浮かべるのは難しい。