8月26日 煙草色
8月26日
煙草色
たばこいろ
#7D541C
R:125 G:84 B:28
8月26日 煙草色
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その部屋の壁には、ところ狭しと、たくさんの古い写真が飾られていた。
その洋館の主だった人物の家族の折々の節を写した写真。
それは、その洋館に刻まれた歴史そのものだった。
モノクロームというより、すべてがくすんで煙草色に変色した過去の世界。
それらに写る人々の誇らしげな顔、穏やかな笑み、特別な日の緊張した姿。
一枚一枚が雄弁に語ってくる古き良き時代の一家の姿だった。
書斎を後にして、次の部屋に入ってみる。
そこは「喫煙の間」と呼ばれる部屋だった。
当時は、訪問客のうちの男性たちがこの部屋に集い、煙草の煙を燻らせつつ歓談したのだという。
床には幾何学模様のタイル。
正面に外のバルコニーへと通じる大きなガラス扉があり、明るい雰囲気の部屋であったが、家具などは当時の物がほとんど片付けられてしまっており、往時とは雰囲気は違うのかもしれない。
どのようなことが話題に上ったのだろう。
ひょっとしたら、あまり表沙汰にはできないような内容の話が語られていた時だってあったかもしれない。
入口で貰った解説の冊子には、中国風のインテリアで統一されていたと書かれてある。
昔見た、上海の租界を舞台にした映画の怪し気な雰囲気を想像してみたが、今のこの部屋では、なんだかピンとこないのだった。
写真は、葉巻たばこ。
乾燥した煙草の葉の暗い茶色。ヤニの色ではないようです。
健康の為、世の中は禁煙・嫌煙へと進んでいるし、この傾向が変わることはないでしょうから、この色名もだんだん使われなくなっていくでしょうね。
そのうち、過去の文化と関連した色として注釈が付くようになるかもしれません。