1月19日 リーフグリーン
1月19日
リーフグリーン
Leaf Green
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1月19日 リーフグリーン
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博士は酷く落胆していた。
「ああ、なんていうことだ。これで、食料問題が解決できると思ったのに。」
博士の研究は、哺乳動物の体に葉緑体を組み込むというものだった。
葉緑体は日光を浴びて光合成を行う。
つまり、それを体に組み込まれた哺乳動物は、ひなたぼっこをするだけで、栄養も摂れてしまうのだ。
もちろん、光合成だけで賄いきれない栄養素はあるので、それは、これまで通り食事として摂る必要がある。しかし、多くのエネルギーは、日光から直接得ることができるようになるはず、だった。
博士は、何種類かの動物で実験を行った。
いずれも成功と言える結果を得ることができた。
となれば、最終目的はヒト。人間でも試したいと考えてしまったのである。
博士は自らで実験することにした。
万が一のことを考えて、葉緑体を組み込む組織は人体の表層近くにすることにした。
毛母細胞。
要するに毛髪の根っ子の細胞である。そして毛母細胞というのは、もともと色素細胞からメラニン色素という色素を受け渡されるようにできていた。だとしたら、葉緑素という色素とも相性は悪くないはず……。
博士は、自らの毛母細胞に葉緑体を組み込んだ。
その結果、博士の毛髪は緑色になった。
学生たちはちょっと驚いたようだったが、他の教室の研究者は大して反応しなかった。研究者というのは変わり者が多いのだ。髪を金髪にしようが、ピンク色に染めようが、紫色に変えようが、どうでもよかった。当然、緑色に染まった毛髪など、気分転換の一種としか受け止められなかった。
博士は、寝る間も惜しんで研究した。
だから、日光浴などしている暇はなかった。
しかし、実験のために、食事も制限してしまった。髪に入った葉緑素がエネルギーを賄ってくれるはずと信じて。
博士の頭髪はすっかり薄くなってしまったのだった。
写真は、木の葉と木漏れ日。
若い樹の葉のような明るい黄緑色。