6月30日 薄群青
6月30日
薄群青
うすぐんじょう
#5383C3
R:83 G:131 B:195
6月30日 薄群青
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私は、明け方の薄暗い東の空が、時間と共に白んでいく様をじっと見ていた。
どうにかして、あの青を自分の手で表現したい。
そう望んでから、随分と時間が過ぎた。
北欧の山と湖が作り出す風景の青。
それに勝るとも劣らない私の国の青。
私は、それを表現するために、長年かかって高価な群青の岩絵の具を集めてきたのだ。
青は1つの色ではない。
数限りない青があって、だからこそ、青が群れると書いて群青なのだろう。
いよいよ時が来たのだ。
私は、画室に戻って準備を始めた。
粗い粒子の濃い群青から、粒子が細かくなるにつれて僅かずつ薄くなっていくそのグラデーションを丹念に確認していく。
膠の溶ける臭いがして、私は一呼吸置いた。
考えてみれば変な話だ。
高価な群青をわざわざ手を掛けて更に細かくすることで、青を失わせていく。
薄群青は、群青よりも手間がかかるのだ。実は、薄い青の方が贅沢な色なのだ。
私は、明け方の空の青を絹地の上に写し取るべく、筆を執った。
写真は、群青色の夜空に浮かぶライトアップされた桜の木。
青の画家、と表現される画家は何人もいますが、青に魅了される画家がそれだけ多いのかもしれません。
東山魁夷画伯の青は、日本人の郷愁を誘う色だと思いますが、かの画家が青を意識したのは、北欧の風景を見てからだという話を何かで聞きました。
意外と、そんなものなのかもしれません。
本文の画家は、架空の画家ですよ!
毎回のことですが……。