6月21日 金茶
6月21日
金茶
きんちゃ
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6月21日 金茶
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こんな所に喫茶店があったとは知らなかった。
僕は、急に降り出した雨を避けるために、とにかく屋根のある場所を探した結果、広い通りから一本南側に下がったところにある細道に、小さな喫茶店を見つけた。
正直、助かった。
そして、少し重いドアを開けると、カランカランと、ドアベルが鳴った。
「いらっしゃい。」
店内のカウンターの内側から、若い女性が声をかけてきた。
店内は、外側から判断していたよりも奥が広く、意外にも狭いとは感じなかった。
木製の丸いテーブルと椅子が並ぶスペースと、カウンター席があるが、客は1組もいなかった。
「お好きな席へどうぞ。」
僕は、少々荷物が多かったこともあり、テーブル席の方を選ばせてもらった。
そして、メニューを見ると、そこには自家製ケーキとか、ハーブティとか、おそらくは、若い女性向けと思われる品がずらずらと並んでいた。
「お決まりになりましたら、声をおかけください。」
そう言って、お冷のコップとビニールに入ったお手拭きを置いて、女性が立ち去ろうとしたが、迷っていても、どうせ分からないので、飲み物は一番上に書かれたものにし、自家製ケーキのうち味が想像できたチーズケーキを頼んだ。
そして、注文の品が来るまで、鞄の中から取り出した読みかけの本を読むことにしたのだった。
誰に勧められたのかはっきり覚えていないが、結構長期に渡って続いているシリーズもので、文庫本の新刊が出たらほぼ惰性で購入、読み続けている作品だ。暇つぶしには重宝している。毎回、事件に巻き込まれ、それを仲間たちと解決する。そして、次巻へ続く、のパターンだ。作者は終わらせる気が無いんじゃないか、という噂さえあり、主人公たちは最初の頃からまったく年を取っていない。
主人公は紅茶を好んで飲むのだが、これは作者がファンだと公言している某作家の代表作の主人公のパクリで、しかし作者自身は紅茶の知識が乏しいため、かなり嘘が多いというのが、ネット界隈での評価だ。
紅茶の知識なんて、僕にもほとんど無いので、はっきり言ってどうでもいいのだが、このシリーズを読むと紅茶が飲みたくなる。美味そうなのだ。
僕は本当に美味い紅茶なんてものは飲んだことはないのだが、架空の話で、嘘が混じっているとしても、読んでいる人間の欲求を刺激するというのは、やっぱりさすがはプロの作家だなと思う。
隣でカシャンと、陶器が小さく鳴る音が聞こえた。
女性が、チーズケーキの乗った皿とフォーク、同じ模様の描かれた空のティーカップとソーサーを机に並べてくれた。更に、やはり同じ模様の描かれたポットを置いた。
「以上でよろしいでしょうか?」
女性に訊ねられ、僕は、頷いた。ポットの中身をティーカップに注ぐ。鮮やかな金茶の液体だ。
「それ、紅茶の話が出てくる話ですよね。これも、確か3巻に登場したんですよ。」
女性が思いもかけないことを口にした。
写真は、ガラス製のポットとカップに入った紅茶。
アイスティーかもしれません。
金色がかった明るい茶色。オレンジ色に近い色。
毎回のことですが、架空の話です。
登場するのは架空の作家の架空の小説です。
猫も紅茶は、詳しくありません。
嫌いではありませんが、茶葉がどうしたとかいう話は、さっぱりです。
ミルクティーに関しては、紅茶が先で、牛乳は後です。
……金茶の話じゃなくなってきましたね。すんません。