5月24日 サイプレスグリーン
5月24日
サイプレスグリーン
Cypress Green
#264939
R:38 G:73 B:57
5月24日 サイプレスグリーン
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わあっ。
突如、後ろから強い力で押され、僕は車内のさらに奥へと追いやられた。
平日は、いつものことなのだが、地下鉄の混雑には、まったく慣れることができていない。
意図せず追いやられた位置で、僕の隣では、これだけ混雑しているにも関わらず、中年のいかにもサラリーマンといった感じの男が、スマホを覗き込んでいる。
何が面白いんだか。
男の覗き込んでいる画面が、ちらりと視界に入った。
それは、大手自動車会社の主力商品である車種の新型モデルの宣伝記事だった。
どうも、新色が出るらしい。
男が画面をスクロールした瞬間、僕の目には、サイプレスグリーンの文字が飛び込んできた。
どんな色なんだ?
男が記事を読み終えるまでは、画像はおあずけだ。
次の駅に到着してしまう。
と、さらにスクロール。
そこには、なかなかにしてカッコイイ暗緑色の車体が登場したのだった。
作中の自動車会社も、もちろん車種も架空のモノです。はい。
サイプレスは英語のCypressで、糸杉のこと。
つまりサイプレスグリーンとは糸杉の緑。
最初、車体の色にこの色? と少し驚いたのです。
しかも、ドイツのメーカーだし……。
糸杉って、欧米では、死や喪の象徴とされていると習ったのですが……。
生命や豊穣のシンボルでもあるらしく、生と死にまたがる象徴性から、宗教画のバックに描かれることも多いようです。レオナルド・ダ・ヴィンチの『受胎告知』とか。
でも、やっぱり印象的なのは、ゴッホの『糸杉と星の見える道』だったり、ベックリンの『死の島』の方なんだよなぁ。
あ、作中の自動車会社は、あくまでも架空の会社ですよ。架空の!