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5月23日 ボトルグリーン

5月23日

ボトルグリーン

Bottle Green

#034415


R:3 G:68 B:21

5月23日 ボトルグリーン

*◇*◆*◇*◆*◇*◆*◇*◆*◇*◆*◇*◆*◇*◆*◇*◆*◇*◆*◇*◆*


今日の午後イチの授業は美術だ。

そして、前回に引き続き、静物画である。

私は当番になっているため、昼休みを早めに切り上げて、美術準備室に向かった。


何か決まりでもあるのか、静物画には、あの緑色の壜が並べられる。

美術準備室の棚にはそれらがズラッと整列していた。

緑と一口に言ってもそれぞれ微妙に違っている。壜の高さも、形も違う。


どうやって集めたのか? と思ったら、これらは随時募集中なのだそうだ。

割れ物なので、当然というか、時々、引退となってしまう壜が出るので、家で良さそうな空き壜があったら持ってきて欲しいと最初の授業で美術教師のヤッちん、こと八神が皆に声をかけていた。


「ビール壜は要らんからな。緑とか青とかの壜がいいな。透明なやつでもいいぞ。形はシュッとしたやつがいいんだが、変わった形の壜や模様入りなんてのもあったら最高なんで。まあ、お家の人が飲み終わったら持ってきて欲しい。」


そんな声に応えて、代々の生徒たちが家から持ち寄ってきた集大成が、これらの壜のコレクションなのだ。


「今日の当番は田中か。少しずつでいいからな。テーブルに壜を運んでくれ。」


ヤッちんは、どこかのスーパーの店内かごの様なかごに、その色付きの壜を入れて、自分も美術室の方へ運んでいった。


「これ、ヤッちんが中身を飲んだ壜もあるんでしょ?」


と声をかけると、ヤッちんは、溜息をついてみせた。


「あのなぁ、ここに並んでる壜、俺の安月給で買えるようなやつ、1本もないぞ。お前ら、いいとこのボンや嬢ちゃんだから、何気に、すごいコレクションになっちゃってるけどな。入っていた中身がどんな味なのか、まったく分かんね~よ。日本製のものもあるけど、フランスにイタリア、ドイツ、スペイン、あと南米とかもあるな。海を渡ってきた、偉~い壜なんだぞ。」


うちの学校は、幼稚園から大学まで揃った私立校だ。

私の家はそれほどでもないが、クラスには親が社長だの、政治家だのといった子が何人もいる。上の学年には父親が俳優という子や母親がモデルという子もいる。


そういう意味では、ここに並んだ微妙に違う緑や青の壜たちは、私のように珍しくもない茶色のビール壜とは違うのだと思った。

挿絵(By みてみん)

ワインボトルの緑色。

光を吸収しやすい赤ワインでは、瓶詰め後の光による劣化を防ぐために赤の補色である緑色のボトルに入れられることが多いそうだ。

一方で、リサイクルしても色は残ってしまう。産地によって色の濃さに差があり、これらを溶融しても均一には混ざらず、まだらのガラスとなってしまうため、緑のガラス壜は環境的にはあまり好ましくないのだとか。

時代と共に、やがては消えていく色なのかもしれない。

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