表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
128/366

5月7日 群青色

5月7日

群青色

ぐんじょういろ

#4C6CB3


R:76 G:108 B:179

5月7日 群青色

*◇*◆*◇*◆*◇*◆*◇*◆*◇*◆*◇*◆*◇*◆*◇*◆*◇*◆*◇*◆*


「はぁ。」

私は深く溜息をついた。

昨日、偶然に見てしまった師匠秘蔵の群青。その鮮烈な色が我が目に残ってしまい、どうにも忘れることができぬのだ。

あれは、非常に高価なものだ。

おいそれと手にできるものではない。


思えば、師匠のもとにて絵の修行に励み、八年もの年月が過ぎた。くる日もくる日も粉本を写し、師匠の評をいただいては、またその貴重なる絵手本を写すの日々であった。

師匠は、代々の絵師の家柄にて、先祖伝来の絵手本を引き継いでおられる。

それらはすべてが門外不出のものであり、一枚たりとて失くすわけにはいかない。

弟子と認められた者たちは、その絵手本を見、写し、その写しを所有することで、絵師として成り立つのである。


しかし、師匠に認められたとして、将来、有力な武家や寺社、私のような者には望むべくもないが公家といった後ろ盾がなければ、絵師としての生業も続けていくことはできぬのだ。

先日、なけなしの金を払って手に入れた『画筌がせん』。あれも、噂によれば、生活に困った狩野派の絵師の一人が、修行先で得た絵手本の写しや、伝承されている秘儀を売った結果、世に出されたという。

少しずつ読み解いているが、群青についても書かれてあった。


あそこまで、鮮やかな色であったとは。


群青は高価であって、滅多なことでは使われない。

ほぼ、如来さまや菩薩さまの頭を飾る時のみに限られるといってもよい。

それか、御上への献上品や金に糸目を付けぬ豪商などからの頼まれもの。

それだけに、私のような後ろ盾のない者には手の届かない色なのだ。


「はぁ。」

また溜息が出た。


あのような色がこの世に存在するということを知ってしまった私は、只々、溜息をつくしかないのだ。

挿絵(By みてみん)

写真はアヤメの花。網目の模様があるから、綾目。

白い筋だけだとカキツバタ。黄色い模様はあるけれど網目になっていないのがハナショウブ。


日本画材の岩絵具の「群青」に由来する紫がかった深い青色。

群青は鉱物の藍銅鉱アズライトから作られていました。高価でした。宝石が原料だったので仕方ないのです。

実際、かなり限定的な使われ方をしていたようです。


仏様の頭の部分とか……。

なんだか不思議な感じがしますが、仏陀は「頭髪が青瑠璃色で右旋している」ということになっているらしく、正式な仏画や仏像の頭部は群青色に塗られていたりします。

「なろう」における異世界転生でも、髪の色が青だの水色だのピンク色だのというのがお約束になっている(?)ようですが、一旦、仏になったとすれば、青色の髪なのも納得かもしれません(嘘です。冗談です。)。


画筌がせん』は一種の暴露本扱いのようですが、独学で絵を学ぶ人たちには需要があったとか。あ、「生活に困って」というのは創作上の架空の噂話です。真相は分かりません。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ