4月19日 消炭色
4月19日
消炭色
けしずみいろ
#524E4D
R:82 G:78 B:77
4月19日 消炭色
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「お待ちなさい。」
辺りの温度が急速に冷え込んだような気がした。
静かながら、しかし怒りを含んだその声色に、俺は心底肝を冷やした。
やっちまったか?
俺は思わず隣の緋色の髪の女剣士の方に目を向ける。
すると、女剣士は、その美しい緑の瞳を瞑ったまま、ゆっくりと左右に首を振ってみせた。
もはや、止める手立てはない。そういう意味なのだ。
銀髪の僧侶は、怒りを抑えるようにしつつ、まったく収まる気配のない怒気を辺りに巻き散らかしていた。
さ、寒い……。
俺と女剣士が、所在なく突っ立ったままでいる間にも、僧侶から漏れ出る冷気で周囲はピキンと音を立てそうに変化していった。
や、やべぇ!
どうにかしなければならないが、どうにもできない。
そして、さすがに事態の状況を理解した連中も、固まっていた。顔色は蒼褪めている。
「今、なんと言いましたか?」
僧侶は、ゆっくりと、連中に向けて問うた。
しかし、連中はガタガタと震えており、口を利ける状態ではなかった。
「聞こえませんでしたか? なんと言ったか、とお訊きしたのですが。」
僧侶はなおも詰め寄る。
「良いでしょう。あなた方に2つの選択肢を差し上げます。1つは、このまま神の炎に焼かれて消炭になること。そしてもう1つは、爆発して消え去ることです。さぁ、どちらが良いですか?」
「けっ、消炭? 爆発?」
呆気に取られた少女の口から言葉が漏れる。
いや、いや、いや、確かに言ってはならぬことを、そいつらは口にしましたよ。
しましたが、神に仕える身で、それは駄目ではないでしょうか?
あまりにも無体です。
なにとぞ、神の慈悲を!
俺は、あまりに気の毒な連中の様子を目前にして、どうにかできないか、僧侶の機嫌を取る算段を考え始めたのだった。
写真は、炭。
火を消した木炭の、うすい灰を飛ばすと現れる炭の色。
深い黒色ではなく、暗い灰色。古い文献には、見られないことから、明治期以降の色名だと推測されます。