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冥界の使者


「あのぅ、ちょっと。勝手をされると困るんですけど~」


 真夜中、弱弱しい声が聞こえたので、顔をあげると青白い顏に黒い髪の、青年が立っていた。


 コルデー家に深夜の……不法侵入。


 発語したのに、誰も起きてこない。お母さまは私を抱いて入眠中、少し離れた所にいるソニアとルーク、ハンス君も熟睡されている。時折寒いのかもぞもぞとしてはいるが、入眠中。


「え、ちょっと、僕のこと見えてますよね?? 思いっきり、目が合ってますよね?? ちょっと、何見なかったことにしてるんです?」


 青年の目。人間でいうところの白目の部分が黒い。冥界の住人の特徴だ。周りにキィキィと鳴く病魔を連れている。


「あの、ホント、困るんですよ。どういうつもりか知りませんけど、死神の名簿を勝手に書き換えられちゃ」


「キャッキャ(赤ん坊なので難しいことわかんない)」


「いや、無理ですから。無意識に上位魔法が使える赤ん坊とか無理がありますから」


「(いや、いるかも知れない。可能性はゼロじゃない。信じることから始めるべきだ)」


 一生懸命説得に走るが、死神君は納得してくれない。


「まずルシア・コルデー。本当なら二週間前に肺炎と栄養失調、両手足が壊死した状態で亡くなっているはずでした」


「(今ではとってもお元気に!よかったね!)」


「……次に、ソニア・コルデー。本当であれば昨日、森の中で村の子供の身代わりにされ魔物に襲われ、食い千切られながら死ぬ予定でした」


「(五体満足ですね!よかったよかった!)」


「……勝手をされると困ります。冥界には天秤があるんですよ」


 私が笑うので、死神君は溜息を吐いた。


 もちろん冥界の天秤のことは知っている。この世界にはたくさん、ルールがあって、人間が知らないルールの方が多かったりもする。


 死んでいく命、生まれる命には決まりがある。

 冥界の王がそれを管理しているので、私も前々世の頃、戦場で大量の死者を出して冥王直々に会いに来られたことがある。


「(数は揃えてる。問題ないだろう?)」


 同じ年頃の子供と、その親が問題なく冥府に送られる。


「……」


 赤ん坊のまま微笑んで言うと、死神くんは顔を顰めた。


 命の価値は平等だ。


 人間側からすると、感情とか身分やら何やらで優劣が付けられるが、冥府からしてみれば王者も亡者も等しく一つの魂でしかない。男女の区別もない。


「……とにかく、これ以上勝手をされてはこまります。あなた何者です?と聞いて答えては貰えないでしょうが、お願いですから、ぼくの管轄内でこれ以上生き死にを操作するのは止めてください」


「(何分今はこれこのように、赤ん坊の身。養育されないと死ぬので、自分の身を守るために周りを死なないようにするのは生存本能かと)」


「あなたの名がぼくの名簿には載っていない。つまり、ぼくがここの管轄をする10年はあなたが死ぬことはないので、なんとか生き延びると思いますよ」


 死神のお墨付きを頂いてしまった。


 まぁ、信じない。

 私は自分が特殊な生まれだと感じている。赤ん坊で前々世の記憶があって、魔術を使えるとか普通なわけがない。死神の名簿に自分が乗らないイレギュラーである可能性の方が高いだろう。つまり、いつ死んでもおかしくない、ともいえる。


「この村は、冬を越せず全滅する予定です。ホント、邪魔しないでくださいよ」


 死神くんはそれだけ言い残して、そのまま姿を消した。



 なるほど、それは良いことを聞いた。




  

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