罪な二人
「フルハウス!」
そう言うと、男が得意げに手札を広げた。既に勝利は自分の物だと確信した様子で葉巻に火を点ける。
「え〜っと、今回のかけ金は幾らだったかな。」
その言葉に、周りを取り囲んだ野次馬からは嫉妬とも羨望ともつかぬ溜息がこぼれる。
「勝負は終わってみないと分からない。そうだろ?こちはらロイヤルストレートフラッシュだ。」
ディーラーが得意げに手札を広げた。野次馬は一変して、今度は驚きの叫びをあげるのだった。
「今日の俺は絶好調のようだ。折角掴んだチャンスだったのに、残念だったな。」
テーブルを叩きながら席を立った男は、ディーラーを指差しながら罵った。
「イカサマだ!そんな役が出来るはずがない。みんなもそう思うだろ!」
周りの群集に同意を求める男だったが、所詮は他人事。誰もが今後の成り行きを見守ろうと、にやにや笑っているだけだった。
ディーラーに慌てた様子は見られなかった。その落ち着き払った様子からは、余程見破られない自信があるのだろう。
「イカサマ呼ばわりされるからには、何か証拠でもあるのでしょうね?そうでなければ、軽々しくそんな言葉を口にしないほうが良いですよ。さもないと・・・。」
その言葉が終わらないうちに、男を取り囲むように黒ずくめの男が二人姿を現した。
「・・・どうも今夜はツキに見放されたようだ。ほらよ!」
男は財布から札を取り出すとテーブルの上に放り投げ、その場を後にした。
ディーラーはその夜、見事なイカサマにより男から大金を巻き上げる事に成功した。しかし、そのお金が全て精巧に出来た贋金だと気付いた時には、男は既に何処かへと姿を晦ましていたのだった。