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破壊の魔王  作者: Karionette
外界編 第七章 ルナティクス
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17




「これまでお遊びに付き合ってやったんだ。覚悟はできてるよな?あ?」


「はい。すみませんでした」



見事、エサに釣られた魚と化したわたしたちは、たんこぶを頭の上に作ったまま固い岩の上に正座させられている。


見下ろすのはゼロさん。


小石がたくさんある川辺だ。石が、足に刺さって、ものすごく痛い。



「まず、お前だ。クソガキ。

遊ぶのはいいが時と場合と相手を考えろ。俺を使いやがって……。やるなら狐とかクガネとかにしろ。あいつらなら喜んで遊んでくれるだろうからな」


「いや、でも…ゼロさんじゃないとダメだったっていうか…」


「舌ひっこぬくぞ」


「はい。すみませんでした」



くぅ。ゼロさんならわたしの真意が伝わると思ったのに!



「次にヴァンパイア。お前暴れるなら他に迷惑かけんな。探せって言われるこっちの身にもなってみろ。迷惑かけるなら銀だけにしろ」


「り、龍は怖くての…」


「龍なんざ只の白蛇だろうがよ」


「し、しろへび…」


「絶対に嫌で無理ならそう言え。お前も、あいつを否定できねぇから、拒絶するんじゃなくて逃げるんだろうが。

そんなに嫌なら、いつかとち狂うことになるだろうが別にいいだろ。お前の人生だ。

どっちを選ぼうが、理性とばす前にきっちり壊してやるから、存分に堕ちて消えろ」


「………う、む」



ルナは顔を青ざめさせながらも、しっかりと頷いた。座り方も知らない正座初心者みたいで、違う種類の足の痛みに、さっきから冷や汗を吹き出している。



「ゼロさん、おひとつ質問よろしいでしょうか」



わたしは礼儀正しく姿勢も正しく、まっすぐに手を挙げた。



「あ?」


「これからどうなりますか?」


「お前ほんといい度胸してるよな…」



呆れた表情のゼロさん。

お前の立場わかってんのか?あ?って目が言ってる。


わかってます。遊びすぎました。でも気になるんですよ。



「知るかよ。俺はこいつの脱走については何とも思ってねぇし、銀も周りの奴らがどうかならないように捕まえろって言っただけだろ。被害出さねぇならここで解散だ。好きにしろよ」


「…よし、じゃわたしはリオに謝りにいこっと」


「いや俺が呼んできてやるよ」



なんとも親切な!

こんな土地勘もないところで1人を探すなんて無理かなって思ってたところだった。



「ありが…」



ありがとう、ゼロさんって言おうと思った。でもその悪魔の笑みで言葉が途切れる。



「連れてくるまでそこで正座してろよ」



見張り番がトンと膝元に降りる。クロちゃんだ。



「……ゼロさん?」


「さて、質問攻めで疲れたし、ゆっくり行ってくるかな。お前はどうする?ヴァンパイア」


「わ、妾はー、そのー、狐娘よりもの。うむ。やはり銀に謝らねばなー、うん」


「この裏切り者!!!!!!!」


「裏切ってはおらん!妾は妾でやることがある!仕方ないことだろう、うん」



うん、うんって、自分で納得しようとしてるじゃんか!さっきから冷や汗だらだらじゃないか!



「イーリスよ、妾は行ってくるぞ。そなたのおかげで、落ち着くことも楽しむこともできた。ルシファ、助言感謝する。妾はもっと妾としてしっかりせねばな!」



そう堂々と言い放ち、ふらふらする足を支えながらルナは飛び立った。ここは良かった、と思う所なんだろうけど、裏切られたばかりではそう思うこともできず…。



「ルナの馬鹿ーーーーー!!!」



さっきまでわたしがいたその背中に向かって、盛大にそう叫んだ。


結局、数時間の末にリオが来てくれて、泣きながら正座するわたしに面をくらったみたいで、お咎めなしだった。むしろ、あいつを助けてくれてありがとうと言ってもらえた。


クロちゃんはふわふわ尻尾でたんこぶを摩ってくれた。かわいいけど、痛いですよ?


ルナは銀さんにきちんと謝って、それからリオやクガネにも謝って、頑張ると決めたのだそうだ。

そのために銀さんに協力をお願いして、銀さんも快く引き受けてくれたとのこと。


なんでそんなに強制したのかと、後で銀さんに聞いてみたけど、結局ルナの状態は特例とはいえど、ティナであることは変わらないため、その天秤が崩れれば完全なティナ堕ち、つまりは自我を失くす未来が待っているのだそうだ。

むしろ、自我というか精神の力である魔力がほぼなく、得ることができない分、危険性だけならゼロさんよりも高い。


絶対強者である銀さんを見て不安になったり、逃げだしたりするのも、結局は精神力が弱いから、とのことだった。


それを聞いて、ルナに頑張ろうと言った。

ルナはもちろんと胸を張っていたけど、表情には陰りがった。だからわたしも協力することに決めた。友達がそんなことになるかもしれないなんて嫌すぎるもん。




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