01
「うわあ!」
歓声をあげたのはガキ。
「うわあ…」
嘆いているのはヴァンパイア。今いるのは、ルナティクスの街全体を見渡せる丘の上。
俺の家の近くだ。
「すごい…木で作った家ばかりで…。水晶がキラキラしてる」
「うう…ほんとに来てしまった…戻ってきてしまった…」
街は大きくはない。家も少なく、畑やら花の方が目立つ。街のど真ん中には緩やかな河が通っているし、大都会とは真逆のつくりだ。
建物はすべて木造で、こいつが光っていると言っているのは全て魔石。銀の改造した特注品で、街の動力関係はすべてコレで補っている。
都会ではないが、ここほど発展した場所はない。
「…あんまり、街の人いないね」
「まぁ夜だしな。寝てるだろ」
「明日になったら、その…人間じゃないひとたちと会えるの?」
「あー…すぐには無理だろうな。銀が指示する」
人間ではない奴の街。つまりは人間が滅ぼしそこなった生き物の街だ。
クロのような奴は稀で、大抵は人間に少なくない恨みを持っている。いや恨みではないか。好ましくないって程度だろうな。
どっちにしろ、あまり不用心に放り出すわけにはいかないだろう。
「それで、今日はこのお家で寝るの?」
「俺は銀に用がある。お前らで勝手に使え。一応、俺の家だし」
「ルシファの家じゃと!?わ、妾いちばんのりーー!!」
「え?ちょ、ルナ!?わたしも行く!!」
いや、俺の家だからなんだよ。走り出すあいつらを追うと、背中に焼けるような視線を感じた。
俺に向けてじゃない。
「…ま。中には起きてるやつもいるよな」
気にするのをやめて二人を追った。
家の中は意外にも綺麗にされていて、埃だつようなことはなかった。銀が整備しておいたのだろう。別に俺に家なんかいらねぇのに。
「ゼロさん、すごい数の本だよ!」
「見よ、ルシファー!美しい音色たちだ!こんなに楽器があるとはな!」
「高そうなもの見つけたー!」
「すごい装飾品見つけたぞー!」
知ってるっつーの。俺の家だっつっただろ。
「好きに使っていいが加減しろよ。壊しても俺は直せねぇし。あと、ヴァンパイアはどうせ寝れねぇだろうから連れて行くぞ」
「え゛」
「わたし一人かー。クロちゃん一緒に遊ぼうね」
「うきゅ」
となると、何かあった時に守るやつがいねぇか。でもヴァンパイアは…銀にとっては、ある意味俺より重要度高いだろうしな。主に罰を与えるという意味で。
加えてヴァンパイアとガキの二人じゃ、ルナティクスに対しての知識面が不安でしかない。頭が空っぽのやつと世間知らずだ。最悪の組み合わせだといっていい。
「…つーことで頼めるか?」
俺は後ろに小刀(ヤマト所有物)を放った。さっきからずっと付いてきている、銀の懐刀とでも言おうか。俺にとっても付き合いの長い奴。
そして、俺が知る中で一番俺を殺せる可能性の高い奴だ。
「クガネ」
小刀を咥えて現れたのは小柄な男。ゆったりとしたラフな服装の少年だった。
「ぜろ!!!」
そいつはたどたどしい言葉で、金と赤の目を輝かせた。




