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破壊の魔王  作者: Karionette
外界編 第五章 魔物討伐
56/354

05




前もそうだった。ジルおじさんたちに襲われた時も。


何故か、ざわざわするんだ。



「おまえ!」



ゼロさんが叫んで前に出ようとするも、既にわたしは水と氷が混ざった魔法に包まれていた。

水は、効かない。衝撃もないし痛くない。

でも氷になるとダメだ。浅いけど切れている。ゴンゴンとぶつかって少し痛い。

あと氷に閉じ込められてしまった。息が、できない。



「馬鹿が!」



ゼロさんによって、瞬時に砕かれた氷がきらきらと散る。



「魔物の魔法まで無効化するかわからねぇだろうが!死ぬ気か、この馬鹿!」



お、お、お…確かに。


魔法が効かないならばと思ったけど、人間と魔物じゃ性質が違うんだった。



「ご、ごめん」


「ごめんで済むかよ。今後一切俺をかばうな。こんな魔法くらったところで俺は大したことねぇんだよ!

熊、こいつを下がらせとけ。ようやく本体が見えた」



ゼロさんの赤い目の先には、小さいやつがいた。小さい、イカみたいなやつ。


こんな小さい本体で、あんな大きい足が10本もあるのか!



「魔法事態は本体の方が上らしいな!よしゃ!ワシが突いてくる!」


「お前はガキを守ってろ。カラス、来い」


「ったく!カラス使いが荒いぜ!」



ゼロさんの銃がぼんやり光り、そして発砲した。

すでにスターの姿はなく、弾は一直線にイカへと向かっていった。



「ゼロぉ!島だ!」


「熊は足を押さえろ!全員!最大火力の準備だ!1分後に間に合わせろ!」



弾が当たる。高い悲鳴があがり、何故かそのイカが浮いた。スターがイカに憑依したのだ。



『はっはー!あんなに早く飛んだのは初めてだぜーい!』



なんとスターはゼロさんの銃弾に憑依し、着弾と同時にイカに憑依したのだ。足10本を含めれば重い魔物だが、海に浮いていて本体は小さなイカ。スターの力でも十分に飛べる。



『ほらよ!いっちょあがりだぜ!おらああああ!!』



スターが天高く飛び、そして上空からイカの魔物を捨てる。


ゼロさんが剣を投げ、イカの体はその孤島の大地に串刺しにされた。



「ぎいいいいいィィ!!」



そして、全ての魔力を総動員した魔法が海を荒らす。一斉に躍りかかってきた足たちは熊おじさんが全て固定し、ひとつも動かさせない。



「…ち。これじゃ火力不足だ」


「これでも足りないの!?」



上に広がる巨大な魔法を見れば、そうとは思えない。でも、ゼロさんの見ている景色はわたしとは違う。



「俺がやるしかねぇか…」



ゼロさんの体からじわりと闇が揺らいだ。


何故か、命が滲むように思えた。



「だめ!」



わたしの叫びと魔物の最期の抵抗。これが同時に起き、固定された足が暴れる。ひとつが枷を外して、司令塔であるゼロさんへ向かった。


ゼロさんの目が動く。片手をごきりと鳴らし、避ける気はないようだ。


なぜ? ここにわたしがいるから?


一瞬の出来事に体が咄嗟に動く。



「ゼロ!!あぶねぇ!!」



熊おじさんが遅れて叫ぶ。


ゼロさんが片手を食わせ、もう片方の手で闇を放つ姿が見えた気がした。


だめだ。それ以上力を使ったら、だめなんだ。



「従え!!!巨となり屠れ!!!!」



突然で、何が起きたのかも、わたしが何を言ったのかも、わからなかった。


ただゼロさんが無事で、綺麗な赤い眼でわたしを見ていた。




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