04
魔物が死んだ。馬鹿な方法で熊が殺して、魔力も消えた。
なわけあるか。終わっていない。
隠れて俺を見ている。司令塔が誰だか、わかる知能があるということか。
加えて魔力の感知がしずらいこの状況……相当離れているのか?
いや違う。
「全員船を守れ!!」
声を張り上げたときには既に遅く、周りは9本の足に囲まれていた。
その足は、ひとつひとつがさっきの蛇もどきと同様。そいつらは不気味に笑っていた。
あの馬鹿ども。
指揮官が勝利宣言するまで、油断してんじゃねぇよ。
周りの反応が遅い。あの体躯がもろにぶつかれば船が一瞬で壊れる。
「クロ!!」
声に応じて巨大化しながらクロが飛び出し、俺も腕のみに力を通した。
倒れこむ蛇もどきの攻撃を、身を挺してクロが2本分、カーバンクルの力で盾を召喚して2本。俺が腕で支えて1本防いだ。そして残りが船へと直撃する。
「うわあぁあ!!」
「ぎゃああああぁ!!!!」
悲鳴が飛ぶ。計算内。これくらいなら船は壊れねぇ。
即座に俺が触れている足を破壊。見られたらどうするか?知るかよ、そんな余裕ねぇ。
「…おいおい」
魔物はあろうことか、そのまま体を船へ巻きつけ持ち上げ始めた。何をするのか、容易に想像できる。ついでに破壊した足が徐々に再生しているらしい。
「カラス!!船!!」
「ほいよお!じゃあな、相棒!」
「え!?ちょ…」
盗人から憑依をやめ、船へと憑依対象を移すカラス。
魔物に持ち上げられた船は海面に叩き付けられる寸前で風に流されて滑空し、海へと着地した。
「重い!!!!」
カラスは大きさ関係なく憑依できるが、飛行能力はカラスの力そのもの。対象の大きさによって変動するわけじゃない。こいつには人間や物資が乗った船を飛ばせるほどの力はないようだ。
カラスが離れて、急に飛行能力を失った盗人が海に落ちたが……まぁこれはとりあえず放っておこう。死にはしないだろ、たぶん。
「A、戦えないやつを船内へ捨てて、各サポーターは被害状況を知らせろ。本体は海底だ。蛇は飾りだと思え!」
さて、問題はどうやって本体を引きずり出すか、だ。足の相手をしていたらラチがあかない。
「ゼロさん、クロちゃんが…」
ガキがぐったりしたクロを抱え、泣きそうな目でこちらを見る。巨大化したところで頑丈になるわけでも強くなるわけでもない。ただ、大きさ相当になるだけだ。
足の叩き付けを体で防いだクロはもはや戦力には数えていない。
「休ませてやれ。クロ、おとなしくしてろよ」
幸い、敵への魔封じはまだ効いている。
このチャンスを生かしたいところだが、こちらへ被害も多少ながらに出ている。めんどくさいことに相手の魔力が見えない。本体の居場所が深すぎる。
このままじゃ逃げ切れねぇな。弱らせないと。
「熊、舵をとれ。近くの孤島めがけて進め」
ちょうど片手に盗人をつれて海からあがった熊に指示をすると、熊は気絶したそいつを放り投げて首を傾げた。
「島?そんなとこに近づいたらスピードがでねぇぞ」
「敵が見えない。島が近ければ海底も近くなるだろ。見えればどうとでもなる」
「そういうもんか。よしゃ、了解じゃ!」
少し目に魔力を流し、辺りを見渡す。
紫から赤になっているかもしれねぇが、この様子じゃ気づくやつは早々いないだろう。
「ゼロさん、どう?大丈夫?」
…見えない。周りの連中の魔力が邪魔だな。とくに熊。ほんと無駄に魔力が多い。
「それにしても…お前ってほんと魔力すくねぇな」
「え゛」
「生きるのに最低限程度だろ。隣にいるのに見ようとしないと見えねぇよ」
ま、魔力の循環のないところで生きていたんだから当然といえば当然か。核が破裂しかけたこともあるんだし、今となったら少ない方が助かるし。
と考えていたが、こいつにとっては思ったよりもショックだったらしく唖然としている。
呆けてる場合かよ。
軽くガキの後頭部を叩き、手近な武器を取りに行かせた。
とりあえず一斉に足を切り落として時間を稼ぐか。
「Bは後方待機。全員、目の前の足に集中しろ。合図で首をおとせ。あいつは今魔法が使えない。物理攻撃のみ、対応しろ」
懐から銃を取り出す。
船には武器が持ち込み禁止ということだったが、銃弾の入っていない銃の持ち込みは許可された。この銃は俺の魔力を消費して弾を打ち出す銀印の特注品だ。これなら鱗も貫けるだろう。たぶん。
「3.2.1…今だ。やれ!」
同時に9発発射し、避けることができずに貫かれた。脆くなったそこを狙い、一斉魔法攻撃。首を落とすには至らなかったが、ダメージは与えられたらしい。まぁこれは所詮足だ。本体にダメージがあるかどうか…まぁゼロではないと思っておこう。
「しいいいい・・・」
魔物も魔物で、物理的な攻撃は防がれ、魔法攻撃は封じられている。こちらに有効打を撃てないようだ。俺はガキから適当な武器を受け取り、前に出た。
「全員、休んでろ。手をだすなよ」
「「え??」」
戦闘中に休めと言われたのがそんなに不思議かよ。
「時間経過はこっちに有利だ。休めるときに休んでろ。熊、半分任せたぞ。船を攻撃させるな」
「よしきた!」
取り囲む足を前に、剣を担いで向き合った。俺の背には熊が歯を剥き出しにして唸る。
物理でくるなら防御の固い熊と技のある俺で十分守れる。
「あ?」
そのとき突然、見当違いの方向から魔力を感じた。微弱な魔力だが、明らかに敵意を向けている。俺がそちらに目線を向けるのと、ガキが飛び出すのはほぼ同時だった。




