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静かな船内は途端に騒がしくなり、足音と金属の音、時には悲鳴が混ざるカオスぶりだ。
「ワシの船がぁーーーー!」
と、熊も走ってどっかに行った。
俺はまだカラスの首を捻っている。
こいつらがここにくるとしたら情報収集か盗み。そんなことは猿でもわかる。そうじゃない気配がすると思ったらまさか魔物かよ。早く言えよ、この馬鹿ども。
「ゼロさん、死んじゃうって!そんなでも相棒だからさ!勘弁してくれって、うげだっっっ!!」
「うるせぇ。お前も同罪だ」
馬鹿な盗人の頭に踵を落とす。
「その宝がなんか知らねぇが返せばいいだろうが」
「いや。元の位置に戻すのはありだけど、返すのは無し」
めんどくせぇな。ほんと。
もう一度頭に足を落とした。
「へっへっへ。帝王、甘いな。オレ様たちは怪盗だ。船がどうなろうが逃げようと思えば簡単なんだよ。大変なのはお前たちの方。ほら、今なら戦力になってやるぜ?この魔物の力をな」
挙げ句の果てに鳥ごときがなんか宣う。黙って首をしめる力を強くしといた。
この鳥がそこまで戦力になるっていうなら、魔物同士仲良く殺しあってくれよ。
わざわざ船に逃げ込んだってことは体力の限界だったんだろうが、雑魚魔物。
「どうするの?ゼロさん」
ガキは船内の騒ぎと唸りをあげる海に不安になったらしく、クロを抱き締めたまま離そうとしない。
どうする、か。
「この船は多分だめだ。さっさとずらかる」
「え!熊さんはいいの?」
「知るか。あいつはあいつでどうにかするだろ」
「知るかじゃないよ!」
緑の目が精一杯の険しさを作って俺を睨む。怖がらせたいんだろうが、欠片もその要素がない。ほら、今も波の音にびびってる。
「……イース。俺は全快じゃないし、レイである以上は力も使えない。加えて武器も戻ってない。これでなんとかしろってか?」
「戦力はゼロさんだけじゃないよ」
「あ?」
「護衛。いっぱいいたでしょ?」
「あ"?あの雑魚どもになにができるんだよ」
真っ当なことを言ったつもりだが、ガキは嘗めてんのか、首を傾げる。
「やらないと、大変なのはゼロさんでしょ?」
……………。
「ね?」
「………あー」
まぁたしかに。
こいつ泳げねぇし、魔物は俺に惹かれてきたのもあるしな。魔物は魔力が高いとこに惹かれる性質があるし。
ってことは、夜の海に飛び出したところで追われるのは俺か。で、最悪なケースを考えるとこのカナヅチを海に沈めないといけなくなる。それで最悪死亡。
「……やるか」
「うん」
はー。くっそめんどい。




