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破壊の魔王  作者: Karionette
外界編 第四章 航海
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10



翌日


夜まで暇を持て甘し、やっと牢屋から出られたわたしは最後のパーティーに参加した。


わたしたちの知らないところで色んなことがあったみたいだけど、ゼロさんはいつも通り飄々としている。今も護衛にあるまじき態度で煙草をふかしているところだ。



「こらぁ!ここは禁煙じゃぁああ‼」


「賊が何言ってんだよ」


「ワシが煙草嫌いなの知っとるじゃろ!外か牢屋で吸え!あと今は賊って言うな!」



なぜか今日は熊おじさんも一緒。船はいいのかと聞くのもバカらしい。



「ゼロさんよう、今日発つんか?」


「レイ、だ。公私分けろよ」


「で、今日発つんか?」



司会者が最後のパーティを楽しんで~~と言って拍手拍手。

なんかここの空間だけ切り離されてる感じだ。



「その予定だったけど……目当てがこねぇ」


「目当て?………なんじゃそりゃ」


「こんな美味しいところに食いつかねぇはずないんだけどな」


「だからなんじゃって!」



応える気がどうみてもない。諦めた熊さんは、パーティの料理を漁りに出かけていった。



「………あー、そうだ。イース」


「ふぁい?」



料理を含みながら返事をする。マナー違反だけど、ゼロさんを見てたらもうどうでもよくなっちゃった。



「お前さ、どのくらい呼吸止めてられる?」


「………わかんない」


「じゃ苦しくても暴れないようにできるか?」


「………レイさん、何する気なの」


「この船から降りたときの話。なんか海荒れてるからなぁ」



いや、飛ぶでしょ?もちろん。



「うまくいかなかったときのために。一応」


「なにが!?なにがうまくいかなかったとき!?」


「諸々な」



何がって聞いてるんだよぉおおお!!



「おうおーい」



問答を繰り返してるうちに、両手に串肉ばかりを持ってきた熊おじさんが戻ってきた。上機嫌に肉を頬張っている。串肉、似合いますね。



「これからよ、奴隷ショーが始まるらしいぞ」



串肉を手渡されて受けとるゼロさん。

すごい眉間のシワ。



「どうして奴隷?」



わたしも貰った。

うむ!おいしい!



「金持ちの嗜みだからなぁ、奴隷は。人っていうより物扱いされることが多くてな。金持ちのお遊びにはもってこいなんだと」



金持ちのお遊び。響きが怖すぎる。

もともと貴族が恐ろしいと言われるのも、このお遊びのせいだし、本質は似ているのかもしれない。



「…ということは、今から、その…お遊びが?」


「いやいや。これから始まるのは金持ちアピール大会じゃ。こんな奴隷を買える金があるんだ!すごいじゃろー!ってかんじ」



なるほど。わかりやすい!



「ワシも粋がいいのがおったら拾おうかの」


「船長が参加すんなよ」


「がはは!冗談冗談。そんな金ないしの!」



逃げるように新しい肉を取りに行く熊さん。気だるげに煙草を吸うゼロさんはその奴隷ショーの準備を眺めていた。



「奴隷、嫌いなの?」


「……そういう時期が、俺にもあったからな」


「ゼロさ…レイさんが!?」



暗い目を伏せて、睨むように会場を眺める。



「ガキの頃に。腕を買われてコロシアムに連れていかれた」 



重いため息をついて、新しい煙草に火をつける。

昔を思い出しているのか。只でさえ、暗い目がさらに闇帯びている。



「自分から奴隷になったやつにはなんとも思わねぇが、勝手に奴隷にされたやつは悲惨だな。貴族のおもちゃにされるか、裏の人間に爆弾として使われるか、労働力として壊されるか。そんな末路しか残ってねぇんだから」



物として、扱われる。そういうことなのか。



「レイさんは、その時どうしたの?大丈夫だったの?」


「俺?

何戦かはさせられたけど、あん時は荒れてたからなぁ。対戦相手も会場も客も雇い主も、何一つ残さなかったかな」



喉をクックと鳴らして笑ってる。

流石はゼロさん。復讐もばっちり。全然参ってないらしい。



「熊には言うなよ。めんどくせぇから」


「了解」



それにしても、ゼロさんがそんな過去を持ってるとは。あんまり実感はないけど、ゼロさんにも子供時代があって、大変なことが色々あったんだ。


あの奴隷たちのように、見せ物にされたのかもしれない。


そう思うと、着々と進む準備も、後ろで列になってる檻も汚いものにしか見えなかった。



「……あ?」



いつもの不機嫌な、というより驚いたような声。


ゼロさんはすっくと立ち上がり、あんなに嫌そうにしてた奴隷ショーに向かった。わたしも慌てて追いかける。既にショーは始まってるようで、指をたてる大人たちがたくさんいた。



「……」


「……おい」


「いやぁ、ワシもどうしよっかなーって」



そして、始めから見物していた熊おじさんと合流。目線の先には、檻のなかに閉じ込められたえらく騒がしい人がいた。身なりは比較的に綺麗だけど、特徴もない普通の人に思える。


いや、ほんとうるさいな。あの人。がっちゃんがっちゃんと。



「あの人がどうかしたの?」


「あ"ー……どうしたんだろうな。あいつ」



バタバタと動き回る奴隷は、こちらをばちっと見て檻を壊す勢いで猛アピール。がっちゃんがっちゃん音のせいで、司会の人の声も聞こえない。そして、暴れまくった奴隷さんはやっとのことで猿ぐつわを外して、檻を掴んで叫んだ。



「ぜーーーーーー……!!!!!!!!」



その瞬間、奴隷の口に串肉が刺さり、ゼロさんの買い注文は高額で提出された。




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