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破壊の魔王  作者: Karionette
外界編 第三章 ティナ
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どうも 下っ端です。

下っ端すぎるんで、名前とかはいいです。今回はあるお家にきています。


いや、家っていうか、城?


なぜ来たかっていうと、裏の世界のお偉いさん…というか有名人から声がかけられたからです。もちろんオレにじゃありません。オレの上司にです。


受け取ったときの上司はといえば、喜びや恐怖や困惑が混ざった面白い顔をして、狂喜と歓喜と悲鳴が入り混じる奇声をあげて……おっとと、話がずれた。


その有名人さんの住まう城(噂によると強奪したらしい)には、オレの他に上司と下っ端Bさんと腕利きさんで来たんだけど……。

有名人さんと出会った瞬間にBは消えることになった。お使いに行っちゃって。


いやー、あの有無を言わせない感じすごかったねー。

お願いされてるはずなのに、やだって言ったら首とられそうな感じ。さすがの頭もコクコク頷いてたし。


行くのオレじゃなくてよかったー。ひとつでも間違えたら死ぬー。


というかさ、オレだって見た目だけなら強そうな大人の男だよ。強面よ?これでも。そして、ついでに言うとオレの方が歳上よ、たぶん。


でも、なんだろねー、あれ。


格が違うっていうより次元が違うっていうか。見てるものが違うっていうか。

うまく言えないけど、本能的に思ったね、アレは違うわって。

そこらの不良とかとは比べもんにならんね。



「で?用件はなんだよ、ゼロよぉ」



頭は精一杯厳つい顔を作っていた。腕利き君なんて、ガタガタ震えながら武器抜いちゃってるし。

大丈夫?失礼じゃないかな、それ。


ん?なになに?オレはいいのかって?


オレは武器なんて構えてもしょうがねぇし、土下座の準備だけしとくかな。


だって闇の帝王だぜ?指パッチンで殺されそうだよ。



「………つーか、お前誰だよ。鮫の頭領はどこだ」



今更すぎる質問だよなー。



「今はオレだ。親父に代わって来てやったんだ」



はい、これ嘘ね。

親父さん、つまり大頭はこのことを知らない。勝手にこの若頭が動いちゃってる。


まぁ、若気の至り?みたいなもんよ、きっと。


正直親父さんに任しとけよって思う。でもそんなことは言えません。下っ端なんで。

あぁ、帰りたい。



「代理ねぇ…」



そんな探るような目で見ないであげて!

緊張で死んじゃうから!オレが!



「まぁいい。勤まるなら誰でもいいしな」



いいんかーーい‼



「じ、じゃ呼び出した訳でも聞かせてもらおうか」


「その前に使いはどうした?」


「あの黒いイタチか。あいつなら………人質として預からせてもらってるよ」



ほんとのところは謎の煙草の空き箱を渡された後、風のように消えちまったんだけど。



「…次、嘘を言ったらお前らのうちどれか殺す」



え。



「あ。あの子ならすぐ逃げましたよ。黒い箱渡してサーーッと。確かオレらの拠点から西に向かったかな。もちろん撃ったりもしてないっす」



オレは初めて口を開いた。驚くほど棒読みだけどペラペラと言葉が出てくる。


隣で頭が牙剥いてるけど、うるせいやい!死にたくねぇもん!オレは!



「そうか。その箱は持ってきてるか?」


「うす。あんたの物の扱い方は裏の世界じゃ有名っすからね。

渡されたら交渉したいことがある。それを持って訪ねてこい。預かり物を持ってこなかった場合は不適格、てね。

煙草50本入る黒いケースなんて考えられねぇし、ご丁寧に地図も入ってたから、すぐわかりましたよ」



ここで腕利きさんに目配せ。


ほら、早く返しとけって!無くしたとか言ったら土下座開始だからな!


腕利き、黒い箱を渡す。

あーーー、よかった。



「ん。じゃ、交渉に移ろうか」


「その前にオレらを無事に帰すと約束しろ!無理難題を押し付けられて、やらなきゃ殺すなんて言われたら話になんねぇ」



頭、ファインプレー。たしかにその通り。



「安心しろ。これは取り引きだ。脅しじゃない。断るのも条件つけるのもお前次第。

対等に、仲良く、な」



なんだよこわいよ言い方考えてよ全然思ってないじゃん仲良くとか帰りた―――――い!!!



「そうか……じゃ、用件を聞こうか」


「お前の表の仕事だ。明日発のあの船にのせろ」



ふぁ!?



おいおい、なんで知ってんだよ。このひと。


危なくコーヒー噴き出すとこだった!あれは金持ち連中の隠しパーティーだぞ?


というか、オレらが表でやってることもわかってんのかよ!



「……なんで知ってるのか。ってのは愚問だな。やめとく。あの船に乗りてぇってことはルナティクスか」


「まぁな」


「それならそれ用に船を出してやる。正直あまり……ってか、表の方はめんどくせぇ」


「あの船だ。向かう先もだが、乗客に用があるんだよ」


「へぇ?誰に」


「どこぞの怪盗」



ぶぅーーーっ!!!


……あ、すんません。今度こそ吹き出しちまった。


いや、だって、怪盗っていったらあの人じゃん。あの人しかいないじゃん。


乗客リストにのってたかって?載ってるわけねぇじゃん!オレだって名前は知らねぇし、がっつり本名書くわけないし!なんなら乗るかどうか知らないし!!



「なんで、あいつが乗るって知ってんだよ……。こっちもしらねぇぞ……」



さすがの頭も顔が青い。



「そういうのは愚問なんだろ?」



ニヤリと笑う悪魔の王様は、口だけを歪めて先を促す。


どうするのか?ってことだ。



「………表の仕事は只の船乗りだ。航海して船を守るために警備もする。


だから、そのパーティーの主催者と繋がってるわけでもねぇから安全は保証しできない。ただの運転手だぜ。オレらなんか」


「は。安全なんか求めたことねぇよ」



王様はニヤリと笑った。


なんだろ、このすごく余裕な感じ。カリスマ性が溢れて止まんねぇよ。


やばい。なんかかっこいい。鳥肌たっちゃった。



「で、そっちの要求は?」



アルカイックスマイルをこれでもかというほどキメて帝王は問いかける。


要求……もういらないんじゃね?この人と縁が出来ただけで大儲けだよ。むしろ関わって生きてるだけでさ。


贅沢言っていいならサインください。



「銀の連合にいれてくれ」



不届き者のお頭さんは言った。

そして、闇の帝王の反応。



「あ"ぁ?」



おーい。顔にめんどくさいって書いてあるよー。どこに行ったよ、アルカイックスマイル。

あのニヤリと笑う感じのやつはいずこへー?



めんどくさがりな王様は、眉間にシワ作って、目細めて、舌打ち並びにため息をつきました。



「そんなにいいのかよ、あれが」


「当たり前だろ。あらゆる分野のあらゆる情報と力が集まった夢の世界だ。金儲けだって、夢を叶えることだって、なんだってできる!このシャークテールもオレも!もっと大きくできるはずなんだ!」



シャークテールってのはオレらの組のことね。俗に言う海賊ってやつ。


でも、正直そこまで儲かんないから。表でただの船乗りをしてる。



「あ"ー……めんどくせぇな」



もう口に出して言っちゃったよ。この人。



「わかった。口利きはしてやるよ。ただ、あれは俺の物じゃねぇ。入れるか入れないかを決めるのは銀だ。


だから、結局はお前の人間性と能力次第。俺はパイプをつないでやるくらいしかできねぇ」


「充分だ。相応しくねぇっていうなら、オレだって諦める」


「交渉成立だな」



そして二人は固く握手をする……なんてことはなく、頭は大のお気に入りの酒を取り出し、闇の帝王は煙草を取り出した。


それを互いに放り投げ、頭はそれに火をつけ、帝王は瓶の蓋を指ではじく。これも闇の帝王ならではの、契約成立を決めたルールの一つだ。



「うげぇほっげほっげほ‼なんだよこれ‼こんなもん吸ってんのかよ!すげぇきつっっ!くっそ重い!!」


「この体だと効果が薄くてな。銀の作成物だぞ、それ」


「げほっ、まじか、銀さんのか。げほっげほっ!もう一本くれねぇか」


「吸い切ったらな」



結局お頭は吸い切ることができず、煙草はゆっくり燃えて灰になった。こちらからの酒は気に入ってくれたらしく、その場で瓶のまま飲み干してくれた。


本来薄めるものなんだけどね!



「くきゅ」



それからすぐに下っ端Bが戻り、よくわからないものをごっそりと持ってきた。しかも頭にあの黒イタチもどきを乗せて。


渡されたお金は相当余ったらしいんだけど帝王はそれを受けとることはなく、「御苦労」と言ってニヤリと笑い、そして別れた。


おわり、ました。



「お前ら、あれが、帝王だ。上の上の、そのまた上にいる奴だよ」



頭は帰り道にそう言った。緊張の糸が切れたのか、体はぷるぷると震えている。


まぁオレも人のこといえない。理由はわかんないけどオレもガクブルしてる。

汗だっくだくだ。



「それにしても、あのゼロとどんな縁があるんで?」



下っ端Bは首をかしげた。余裕そうだけど、御使いちゃんとできたんだろうな!お前!



「親父がな。あいつに助けられたんだとよ。その場にいなかったから、オレはよく知らねぇけどさ」



あの帝王が、人助け?


いやー、柄じゃないなぁ。信じられんけど、こうして繋がりがあるんだから嘘でもないのかな。


というか大頭。嘘つける系じゃないし。


あー、おわった…。

あの買ってきたもの、何に使うんだろうなぁ。




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