06
扉を開ける。
布団の中、よーし
机の下、よーし
引き出しの中、よーし
タンスの上、よーし
次。
扉を開ける。
「なかなか見つかんないなー」
宝探しは好きだ。
よくみんなとやって遊んでたし、割りと得意だったりもする。
ちなみに一番下手くそだったのがウラガで、たぶん全戦全敗だったかな。
「う、うわぁ」
ただ今回はいろいろと難しい。
まずはこの死体。
アラクネを倒して蜘蛛とか糸とかは消えたけど、アラクネが原因でおきた事態はそのままだ。家も壊れたままだし、もちろん死体も生き返ったりはしない。
ということで、ちょっと溶けてたり虫食いだらけの死体が多くて、はっきりいってグロい。探す気が失せるくらいにはグロい。
次にとんでもなく広い。
部屋も広かったり狭かったりするし、最後に戦った所のような地下室もあるみたいだ。なぜか天井にも通り道があるし、物を収める専用の部屋もある。全部探すとなると引っ越しの準備をするくらい頑張らねば。
最後に……
「なんなんだろ?報酬品って」
目標がわからない。形も内容も。
そんな宝探しあるかいっ!
と、嘆いたところでしょうがないし、ゼロさんに聞いても無駄だろうし、なによりあの人には休んでもらいたい。なんか平然としてたけど傷口から血が滲んでたし、魔力だって戻ってないに決まってる。弱ってるところを見せたくないのは、ウラガもそうだったからわかるけど、絶対に無理してる。
今だけは、とりあえず休んでもらいたい。
「よし」
あらかた探した部屋の扉を開ける。
窓でも玄関でもなく外に繋がる扉で、この先はなんか机とか椅子とかある小さな庭みたいなんだけど、隠せそうな場所は多いのだ。
「………ん?」
なんか、いる。
なんだ、こいつ。
「きゅふ?」
見たこともない生き物だ。
狐のような長い耳にふわふわの長いしっぽ。イタチみたいな顔の額には赤い石がはまってる。足はリスみたいに短い。四足歩行。
そして真っ黒。
見たことも聞いたこともない生き物は、つぶらな瞳でこちらを見上げ、じーっと眺めている。背中に小さな荷物を背負ってるみたいだ。
どうでもいいけど、めちゃくちゃかわいい。
「まさかあなたが報酬なの……?」
そっと手を伸ばす。
伸びた手をその子はふんふんと臭いをかぎ、
がつっ
噛みついた。
「~~~~~~~~~~~~~~っっっ‼‼」
声にならない叫びで喉が震える。
噛まれる可能性を考えなかったわけではないが、痛いものは痛い。というか、思ったよりも痛い。
「キシャーーー!!!!」
小動物特有の精一杯の威嚇。
尻尾をボンっと膨らませ、顔をしわくちゃにして牙を剥いている。よく見たら、ほんと牙鋭いね。
「なるほど、番犬がわりか」
「ギキュッ!?」
ここの主人は、この子に大切な報酬品を守らせたのだ。
狂暴ですばしっこく、見た目のかわいさで相手を油断させる。そんな狙いだったのだろう。
「でも、わたしは騙されないからね!」
わたしはアガドで生きてきた人間だ
人を倒すよりも小さな動物を追っかけ回す方が得意だ。むくむく小型リス狐イタチだって例外じゃない。
「まてー!」
「キシュウウーーー!!」
待ってて、ゼロさん!
必ず報酬は持って戻るからね!




