05
何でティナってやつはそんなに人を殺したがるんだろうか?
種族を滅ぼされた仕返しに人間を滅ぼすなんて現実的じゃねぇし、たとえ叶えたところで何になるんだよ。自分の種族を滅ぼした人間はもうとっくの昔に死んでるんだし、せめて徒党を組むだとか都市を襲うだとかしねぇと人間っていう種族には何のダメージもねぇよ。
目の前の人間を何人殺したって変化が起きるわけがない。
そんな簡単なこともわからずに、何度も死んで、何度も甦って、何度も殺して殺される。
それが神の作ったシステムなのか。
逃れようのない魂のサイクルなのか。
そういうものと、納得するしかないのか。
納得して、いつかは俺もああなるのだろうか。
「おはよー!ゼロさん!」
「………」
「もう夕方だよ」
あれから俺たちは、なんとか地下から這い上がり、比較的損傷の少ない一部屋で休んだ。さすがに俺も限界だったらしく、久々深く寝た気がする。
不用心じゃないかって?
結界張ったからいいんだよ。
「それにしてもこんなことできるならもっと早くすればいいのに」
「そう簡単じゃねぇんだよ」
剣を魔力に戻し、結界へ変換。これが俺のできる守りだ。通ろうものなら、破壊される機能つき。
乱用できないのは、これをすると暫く剣は持てないからだ。
実物のないものに変えちまってるから再生成するのには時間がかかる。
しばらく戦いはなしかな。願わくばだけど。
「でもこんなにゆっくりしてていいの?昨日あんだけのことをしたのに」
「いいんだよ。もともと依頼報酬はこの屋敷丸ごとだったんだ。好きに使わせてもらうさ」
「………え?」
「防音も完備。いい家だな」
じゃなきゃ今頃ここは軍人だらけだ。
アラクネもそれをわかってて窓を割ったりしなかったんだろう。
「屋敷、丸ごと……」
若干青ざめたガキはぼそぼそと呟く。
そりゃそうだろ。一人を殺す仕事で、場合によっては殺される危険だってあるんだ。それを俺に依頼するんだから、報酬が馬鹿げた価値でも可笑しくはない。
ついでに料理人も支給されるはずだったんだが、そいつはあの世行き。まぁしゃーないか。
「ちなみにこういう家はいくつか持ってるぞ」
「‼‼」
「じゃねぇと拠点がないんだよ。宿も易々と使えねぇからな。俺は」
まぁこのでかさの屋敷ははじめてだけど。他は普通の一軒家だったり倉庫だったりが多い。
「ずっと野宿かと思った」
「なわけねぇだろ」
まぁそんなことはいいとして、実は面倒なことが発生した。
銀への連絡手段が消えたのだ。
アラクネとの戦い中にピアスがふっ飛ばされたらしく、あいつと連絡がとれなくなった。あいつがいねぇと報酬の品の保管場所がわからねぇ。
探せって?嫌だよ、めんどくせぇ。
ティナが堕ちたこと、殺すこと、依頼人死亡は伝えたが…しくじったな。煙草の場所だけでも聞いておくんだった。
………もうラスト1本か。
「………おい、クソガキ」
「はい!なんでしょ」
「ここには暫く滞在する。思ったより俺もやられちまったし、出来ることなら全快したい」
「…ま、ですよね」
起こされたから起きたけど、体うまく動かねぇし。傷もそうだが、なにより魔力を使いすぎた。無くした足を戻す余裕さえない。これで魔力があるなら、フル活用して傷だけでも全部治すんだがな。
「つーことで、お前はこの部屋に立ち入り禁止」
「え」
「どっかにある報酬品を探して、見つかったら入っていい。それまでは入るな」
「え?え?」
「あー、飯は勝手に作って食え。俺は要らねぇ。料理したいつってたからちょうどいいだろ」
「ちょ……ゼロさん?」
「以上。出てけ」
扉の外に放り投げ鍵をかける。
はー、やれやれだ。
一人じゃねぇのはやっぱり面倒だな。
まぁめんどくせぇことは押し付けれたし、俺はこの間回復に専念できる。それに、この魔力量じゃ絶対にティナが暴走しねぇとも言い切れねぇし、近くに置いとくのはリスクがあるだろう。
「ゼロさーん?」
扉の外からノックする音。
「なんだよ」
「つまりこれってさ、宝探しだよね!!」
………楽しそうでなによりだ。




