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破壊の魔王  作者: Karionette
外界編 第一章 脱獄
3/335

03




「助けてくれ、ねぇ……」



ガキは嫌いだ。うるせぇし、何より邪魔。

さっき犬と一緒に殺せたらよかったんだが……。

まったく、変な髪色してるせいで面倒なことになった。


今殺したって構わないが、こんな汚くて臭い所まで来て、何も収穫がないのも馬鹿げた話だし、()()()なら利用する方がいい。


さて、どうするか。


このガキ。どう見てもここを探りにきた同業者には見えないし、刃物の類いもなし。

まず見た目がおかしい。手足の細さから見ても筋力があるとは思えねぇ。


なら、こいつの正体はなんだ。


……まぁ考えても無駄だな。答えを持ってるのはこいつだ。



「条件がある」



今にも死にそうなガキは、驚いたように顔をあげた。見てくれの汚さとは反対に、目だけは光をとらえて輝いている。どうも、やりづらい目だ。



「命は助けてやる。かわりに情報のすべてを寄越せ」



ガキ一人とはいえ、荷物を抱えることになるのは間違いないが、そのくらいはどうにでもなる。使えるものを使う方がいいだろ。



「知っていることを話したら助けてくれるの?」


「そういうことだ。どうする?」



ガキは何も躊躇わずに、首を縦に振った。


……やっぱりただのガキ、か。普通なら警戒したり、損得を考えるはず。こんなに早く決まることはない。

とりあえず見た目を変えて、誤魔化している可能性もないと見ていいだろう。

嘘も言ってないし、だますつもりもないらしい。



「じゃ契約成立だ。情報を対価として命は保証してやる」



遠くで犬の足音が聞こえる。

血の臭いを嗅ぎ付けたか、飼い主から指令が出たか。まぁあんだけ派手に断末魔が響けば当然だろう。

そろそろ動かねぇと。



「あの!」



ガキは慌てて走り寄って来た。


完全に射程内。さっき自分に向けて剣を振ったやつに、よくそんな無防備で近寄れるな。

さっきの剣は捨てたけど、まだいくらでも凶器はあるし、むしろお前なんぞ武器が無くても余裕で殺せるんだが?



「なんだよ。言っとくが俺のことについては話さねぇぞ」


「名前は?」



…………そこかよ。



「ゼロって呼ばれてる」


「わたしはイーリス。よろしくお願いします」



ガキは勢いよく頭を下げた。白に近い髪が揺れる。

特に何も考えずその髪を手に取った。



「ふぇ?」


「………変な色だな」


「うん。よく、言われる」



派手でもなく、地味でもなく。白に近い桃色がかった金髪。

………ち、嫌なもの思い出す。



「ちょっと待ってろ。一歩も動くな」



敵に場所はバレたし、もう追っ手がかかってる。痕跡とかどうでもいいな。とっととずらかる方がいい。めんどくせぇし。



「銀。謎のガキを拾った。一番近い出口を教えろ」


『どうした?やけに疲労感のある声をしているな』


「ガキは嫌いなんだよ」


『しかし貴重な情報源だ。持ち帰れ』


「俺に命令すんな。早く道だけ教えて下がってろ。場所割り出されても知らねぇぞ」


『ふむ、いいだろう。少し待て』



はぁ、まったく。めんどくせぇ。



「あ、の。ゼロさん」


「あ?黙れ、クソガキ」



ガキは小さく悲鳴をあげて黙りこんだ。が、意を決したかのように口を開く。



「ゼロさん。敵が、きます、よ?」


「あ?」



緊張した面持ちで申し訳なさそうにガキが言葉にした瞬間。

辺りが真っ赤に燃え上がった。


あーあ。思ったより早かったな。



「ふぁぁぁあ!!」



俺はガキを肩にかつぎながらマスクを引き上げ、炎の中を突っ切った。魔法を唱えた主の首を一瞬でへし折り、そのまま走り去る。

まぁたぶんこっちだろ。



『ゼロ。そのまま直線に出口はあるが、恐らく厳重にかためられている。……その様子なら問題ないな』


「あぁ。ねぇな」


『私は先に引き上げる。健闘を祈る』


「は。そりゃ、どーも」



厳重?上等だ。

今は存分に暴れたい気分だ。





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