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破壊の魔王  作者: Karionette
捜索編 第五章 王城へ
299/344

06




「東の国の王は行方不明。恐らくは監禁、または軟禁。上層部にもアルテマの手が及んでいる、か。……ふむ」


「どうだ。そっちで何とか出来そうか?」



狭い飛空挺で銀は腕を組む。

今回は色々と銀の組織の手を借りすぎだ。できれば控えたいところだが、こっちものんびりはしてられない。

俺の体を考えると。



「どういう手段をとるかだな。アルテマの潜入者を見つけ始末するか、更なる権力で口出しが出来なくするか。どれも時間がかかる」


「あぁ。いちいちアルテマ探しなんざやってられねぇ。とにかく王を見つけたい。潜入が得意な奴なら送ってある」


「ならば、捜索の手段とその後の保護か」


「保護もいい。一応いるし、勝手にどうにかするだろ」


「ふむ……」



ここでは銀は力が使えない。

あるのは、その常識外れの知識量だけだ。

俺も記憶力なら、生きてから死ぬまで忘れたものはないくらいの自信はあるが、こいつの計算や統計学、確率論だとかの諸々にはついていけない。

あと、龍の力を混ぜた技術とな。



「連合の者に城の構造図を渡させる。そこに案内を書こう」


「いる場所がわかるのか」


「確率は高い」



城の構造図が手に入るのも実際どうかしてるがな。



「その協力者をここに呼べ。その者の実力を測れてはないが、1人では不可能だろう。その場合は……」


「俺が行く」


「ああ。それならば磐石だ」



政治は王一人でしているわけではないが、誰がなんと言おうが発言を通せるのも王だ。

国が混乱している状況だっていうなら、王に直談判するしかないだろう。

ま、直談判というか脅しになるが。俺が行く限り。

東の王は…まだそれなりに若い王だったか。




「銀。ルナティクスはどうなった。順調か?」


「何処ぞの奴が雑に切り裂いていてな。補修に時間がかかってる」



……ん。島を切り離すのに雑も器用もあるのか?



「あれでは地表がいずれ死ぬ。その調整を行っているところだ」


「裏はどうなってる?」


「裏と表は繋いである。島を動かす計画は難航しているが、ルナティクスは以前同様稼働中だ」



そうか。

なら、ルナティクスについては問題ないだろう。

表が生きれば、裏は死なない。

表が死んでも裏は死なないし、目的は達成だ。



「安心したか」


「まぁな。俺が言いだしたことだし」


「ほう。まるで終わりを想定しているかのようだな」



………こいつ随分鋭くなったなぁ。



「わかっている。アルテマのことのみに専念したいのもあるだろう」


「……なぁ、銀。なんでお前は俺にそこまでこだわる?」



正直、協力者として俺は面倒だろう。

隠し事は多いし、誰も信用もしない。

実力はあるが、堕ちかけたティナ持ちである以上不安定すぎる。

それに実力行使なら、連合だけでも十分だろう。

俺みたいな異常な勢力を相手してるわけじゃない。


それに、俺はこいつの目的である、龍の友人の遺体探しも人間以外の保護も協力できない。



「言っとくが俺は死ぬぞ」


「……まったく。死ぬぞ、ときたか。私に人間を説いた人間が、ここまで人間らしくないと呆れてくるな」


「俺に生き物かどうか聞いてきた奴のセリフか?それ。それに俺は人間を見てきて知ってはいるが、人間らしく過ごせたことがねぇよ」


「説くならば実践をしろ」


「俺には要らねぇ。求めたら早死する」



俺の生徒は和やかに笑った。

こいつとはいつもこんなかんじだな。



「ゼロ。答えは単純だ。私はお前を気に入っている。知人として、友人として。お前がそうでなくともな」


「悪魔の俺を?物好きだな」


「悪魔の、ではない。お前自身をだ。私は悪魔は好かん」



……は?



「悪魔嫌いだったのかよ」


「……いや、これは、口が滑ったな」



口滑るとかあるのかよ。人知を超えた存在が。

口元抑えたりしてわざとらしいんだよ。



「悪魔という種族は、龍として見てきた上で、私とは合わない。あれは時折常軌を逸している」


「……お前が俺に構うのは、悪魔のティナだからか、研究対象かなんかだと思ってた」


「破壊の力を利用したのは否定できん。ティナは即刻滅ぶべきだろう。誤った、狂ったシステムだ。

驕るな。私にとってお前のティナはそこまで価値のあるものではない。

あるのはお前自身だ。それを忘れるな」



忘れるなって言われてもな。

あんまり考えたこと無かったしな。



「悪魔のティナは生き物に嫌悪感を与える。または危機感、恐怖感だ」


「知ってる」


「だが、お前はそうでは無い。少なくともそうでない生物が多数いる。それはお前の持つものだ」


「……」


「私がどれほど研究したところで、それが何かという答えは出ないだろう。

誇れ、ゼロ。お前は既に悪魔の性質を超えている。だからこそ、まだゼロとしてここに入れるのだろう」



……なんというか。

単純な疑問だったのをこう返されるとはな。

鬼といい、こいつといいなんだよ。

いよいよ本当に死ぬのか、俺は。



「……そういうことは早く教えろよ」


「聞かなかったからな」



まぁ聞かねぇよな。



「はぁ……」



なんか、色々ありすぎだ。

起きる感情をなんて言っていいか分からない。


嬉しいのかもしれない。

同時にひどく、うざったい。


そんなこと言われても、俺は悪魔のティナで俺は最初から"俺"だけではなくて、今の"俺"は悪魔のティナに影響されてないなんて言えねぇんだし。


鬼が言おうが、銀が言おうが。

俺は、本当の俺を知らないし、知ることは無い。


知る手段はひとつ。



「過去を求めるのは当然のことだ」



ち。読みやがった。



「協力は惜しまない。長く生きることにもだ。

理由は、私はお前を気に入っており、死んで欲しくはないからだ。

信用しろとは言わないが、その事実は知っておけ」


「…………わかった」



長い付き合いだ。わからないわけじゃない。

銀が、俺の敵になることはない。




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