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破壊の魔王  作者: Karionette
捜索編 第五章 王城へ
296/344

03



いつものこと。

兵士たちはため息をついた。

終わらない戦争がいつまでも続いている。

疲弊とまでは言わずとも憂鬱ではあった。


国を守るため兵になった。

しかし彼らの敵は国の民間人。

民間人というには戦闘種族すぎるのが難点だが、扱いはそうだ。



「進め!」



指揮に従い、足を進める。

いつもの合戦場。

そこにいつもいる黒髪の一族の姿はない。

代わりに、深くフードをかぶった男がいた。



「あー……」



男は出会うなり、喉を抑えて調子を調べる。

そしてその口から、国歌が流れた。

おぞましく、身の毛がよだつほどの魔の調べ。

まるで戦場というこの場所が舞台かのようだ。


既に戦いは始まっている。

のに関わらず手を出すものは誰もいなかった。


誰よりも国を想ってこの職に就いた。

しかしこれほど国を想って歌えることができるだろうか。


歌は終わる。

動ける者はいない。



「しばらく前より、休戦の意思を提示している。結論がないままでは、こちらも剣は抜けない」



響く声は先まで届いた。



「こちらは回答待ちだ。退却を要請する」



休戦?退却?

迷う暇もなく、怒号が響いた。

突撃の合図だ。


こちらの魔法は音もなく一瞬で打ち消される。

そして歌の男が片手をあげた瞬間、黒島の人間たちが現れた。


歌が変わる。


高揚し、血が躍る音。ごく当たり前のように黒島から咆哮が響く。

それすら音楽に変え、獣のように黒島は襲ってきた。

手に持つのは木刀。

剣は、抜いていない。



「おい!指揮官が一番前にでるんじゃねぇ!」



その声を聴いて目を疑う。

先頭どころか飛びぬけて前進してくるのは、あの男だ。


彼は歌うのをやめない。

そして兵士のすぐ隣で。命に触れる距離で歌う。

まるで死の宣告のように。



「ひ」



さっきの歌声はどこにいったのだろうか。

ささやくように、忍び込むように、呪い殺すように。

士気が下がる。無暗に暴れるものさえ現れた。


自然と歩みが止まり、下がる。

その隙にと木刀は嵐のように降り注いだ。

気づけばこちらの指揮官はいない。


相手の指揮官は下がり、同時に歌は熱の歌に変わる。

先ほどの冷気が嘘のように、灼熱のように燃え盛っていた。

同じ歌としてつながっているのが理解できない。


ここは戦場ではなく舞台。

この男の独擅場だ。

敵ながら、聞き惚れてしまう。

なんて。なんて歌なんだ。


その歌は突如として止まる。

歌い手を見ると、赤い髪の背が見えた。




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