02
戦はどう始まるのか。
どうやら急に始まるんじゃなくて、国側の陣地で合図があるらしい。
殺しに行くぞ!って合図するって変な感じだけど、ずっとそうなんだとか。
……その時点で、戦争じゃない気がする。
アガドで生き死にのために、急襲してばっかだったからそう思うのかもしれないけど。
「ふざけてんのか!木刀で戦ができるとでも!?」
「殺す気か!」
「魔法はどうすんだ、魔法は!」
「オレ素手でいい?」
いつものことだけど、ゼロさんの発言で荒れるみんな。
ゼロさんは、めんどくさそうだ。
「いいから俺の指揮に従え。従わないなら死ぬかケガするかだ。
今後の戦には互いに死人は出さない。被害出してたら休戦なんて言えねぇだろうが」
「だがしかし…」
「それを理由に死ぬまで殺しあうって言ってたのはどこのどいつだ」
喉を詰まらせる黒島の人。
仲間が殺されたからという理由で滅ぶまで戦おうとしていた人たちだ。
「いいから指示に従え。声出して指揮はしない。俺の動き見て今指示内容を覚えろ。いいな」
それからゼロさんは身振り手振りで指揮を説明する。
そこまで難しいものでもなく、しかも魔法は攻撃用には使わないらしい。
「鬼。お前は別」
「よかった。覚えれねぇよ、そんなのって言おうと思ってた」
「お前の目からみて他と比べて違う奴がいたら気絶させて掴まえとけ。それまで動くな」
「オレの判断でいいのかよ」
「動き、仕草、表情、戦闘能力。総合的に判断しろ。一番は指揮系統を担っている奴の可能性が高いが、他に紛れてるかもしれないからな」
「誰が?」
「察しろ。馬鹿が」
ゼロさんは戦う兵士の中にもアルテマの誰かがいると踏んでいるのだ。
確かに、情報を何かしら手に入れたいなら、現場に近いところにいる人も必要だろう。
「頭ぁ!」
「誰が頭だ!やめろ、脳筋一族!」
「戦のしらせだ!!」
見張り役が声を張る。いつのまにか”頭”になっていたゼロさんは不機嫌そうに頷いた。
そして、わたしを見て、にやりと笑う。
「離れとけよ。イリス。絶対にな」
なんでそんな笑って言うんだろう。