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破壊の魔王  作者: Karionette
捜索編 第四章 ウラ ガレア
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ウラガはいの一番に頭を下げた。



「悪かった」


「……いいよ。別に」



本当に、いいのだ。

鬼だってなんだって変わらないんだし、裏切られたとも思ってない。

言いふらすものじゃないし、隠すべきことだってわかってる。



「いや、よくねぇよ。家族に隠し事したんだ。オレが悪い」



そうはっきり言って、ウラガは隣に座った。

今はあの赤い角もない。



「鬼、なの?」


「おう」


「あの、ほんと、怒ってないよ。わたしも…人じゃない存在に出会う機会があって、隠れて生きていかないといけないのはわかってるから。

だから、その……」


「ん?なんで隠れて生きていかないといけねぇの?」



……ん!?



「オレは隠さないといけなかったから言ってないんじゃねぇよ。おまえと会った牢獄にいたときは…鬼じゃないっていうか、鬼として足りなかったからだ」


「足りない?」


「こっちだとマナっていうんだっけ。オレもそれが全然なくて力がなくてさ。なんというか…干物みたいなかんじで」



干物ときたか。



「そんな弱ぇのは鬼じゃない」



ばっさりとウラガは言った。

で、今までも言わなかったのは、必要がなかったのと。



「本気で忘れてた」



とのこと。



「だって、オレが鬼だって誰かに言ってたの何百年も前だぞ?そもそもイーリスに初めて会ったときが人間と話すの何百年ぶりだって話で…。

オレが鬼だってことは忘れてねぇけど、言うのは本気で忘れてた」



そういうことあるのか。

まぁ、ある、だろうなぁ。

わたしも「人間です」と言うことないんだし、アビスシードだと言ったこともない。

言わなきゃいけない方が変な感じがする。



「でも隠さないと大変なんだよ。ティナの事とかは知ってるでしょ?魔物とかそういう人間じゃない存在を狙ってる組織もあるんだから」


「ぶっとばせばいいだろ」



はい。解決。



「まぁオレのことはいいんだよ。ほんとにすまなかった。どういう事情があったにしろ、イーリスには今までずっと隠し事してきたことには変わりねぇ。本当に悪かった」


「えっと。ほんとに、いいんだよ」



ただ……。



「ウラガも、シルクも、わたしに言ってないことあって、しょうがないんだしわかってるんだけど……なんというか」



なんというか、なんなんだろうか。


頭をひねっていると、「よし」と声があがった。

ひらめいたと目を輝かせている。



「おまえに秘密がないせいだよ、たぶん。だからオレに秘密つくれ」


「ええ?」


「死ぬまで教えてくれなくていい」



そんなこと、急に言われてもなぁ。

秘密…秘密かぁ。裏のルナティクスのことも伝えることになるなら本当に秘密とかないな。



「すぐには無理だろうからいつでもいいぞ。その代わり全員に秘密にしろよ。あの悪魔にも」


「そんなこと…いわれてもなぁ」


「とか言ってすでに秘密のひとつやふたつあるのかもしれないけどさ」



楽しそうに笑うウラガ。そんなもの無いよ。あるとしたらわたしも知らないことだよ。



「あのさ。牢獄から出るとき言っただろ。地獄まで追いかけるって」


「うん」


「冗談じゃねぇんだよ。オレにとっては」



大きな手が頭を覆った。

重く強い力。わしわしとかき回される。



「鬼は地獄から来た。だから、おまえが死ぬときはオレもついて行ってやるからよ」


「……」


「人間なら”死ぬまで”って言うんだろうけど、オレは”死んでも”だ。ずっと一緒だしずっと家族だしずっと守る」



オレは騙したり嘘もつかねぇよ。

ウラガはそう言った。


わたしは顔もあげれなくなってしまっていた。



・・・とかっこよく言ってわたしを泣かせたウラガが石のように硬直している。

目の前には銀さん。

石のようにじゃないか。石はあんなに汗かかない。



「ガレアと呼べばよいか?」


「………うす」



どこぞの不良のようになっているウラガくん。

ゼロさんがウラガのことを銀さんに伝えると、銀さんはここにやってきたのだ。

前みたいに思念体というか、本体じゃないけど。



「私は龍だ」


「…わかります」



わかります、だって。

ゼロさんもにやにやと笑い、わたしも必死でおなかを抑える。

もうこれが秘密だったでもいいんじゃないかな。

あ、でも暴露してるからなしか。



「まず聞きたい。ガレア。なぜここにいる?」


「どういう、意味っすか?」


「お前はここにいるはずのない存在だ」



首をかしげるウラガ。

興味深そうに眼を光らせるゼロさん。

銀さんは、相も変わらず表情が読めない。



「お前はここの世界の住人ではない。関りがないわけではないが、関わる必要のない種族だ。その点は私と似ているといえよう。それがなぜここにいる」



ウラガはしっかりと話を聞き、もう一度首をかしげ、反対側にまたひねる。そして言った。



「知らんっす」



もう緊張してるのか怖がってるのか実はそうでもないのか。ウラガはほんと面白い。



「ただ、オレがこっちにくるのに記憶を大部分置いてきてます。じゃないと、色々とー、あわない?からで。

だからこっちでも長く生きてますけど、記憶は結構抜け落ちてますね」


「なるほど。主体の目的すら置いてきたということか」


「たぶん」



やっぱり馬鹿じゃねぇかとゼロさんが漏らす。

即座に反応したウラガの一撃は軽く躱された。



「ただ……オレは守るために来ました。何をかも、よくわからんすけど、守るために来たってのはわかるっす」


「守る?」


「そうっすねぇ…。何か、守らないといけねぇんですけど」



何かもわからねぇと意味ねぇだろとゼロさんがはっきり言う。

また激しい音がすぐ近くで響いた。

あなたたちいい加減にしなさい。



「…まぁ、いいだろう。私は人ではない種族の保護を行っている。ガレア、必要か?」


「いらんすね。むしろ協力するっすよ。その分だと…イーリスも世話になったみたいだし、オレも力はあるんで」


「ああ。そのようだな。では、力を借りる」



銀さんはふっと微笑む。

よかったなと言ってもらえた。


うん。銀さんもありがとう。ずっと力を貸してくれて。



「しばらくはここに滞在しよう。ゼロ、飛空艇を借りる。後で話そう」


「あー、わかった。好きにしろ。それ、ちょっとこっちで飛空艇いじったからな」


「……あれをか?」


「あれをだな」



ゼロさんと銀さんが揃って去っていく。

その後ろをじっと見送ったウラガは姿が見えなくなった瞬間に大きく息をついた。



「イーリス……。いきなりでっかい秘密だな!」



秘密じゃないもん。口止めされてただけだし、もう話したもん。




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