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破壊の魔王  作者: Karionette
捜索編 第四章 ウラ ガレア
286/347

08




日が昇り、イーリスが連れて行けというから色々連れまわることにした。



「どうせわたしの仕事場だよ」



そう自信ありそうに言うからなんだと思ったら…。

本当にその通りだった。



「これを患部に塗って、それから包帯は毎日変えること!」


「こんなもん気合があれば…」


「根性論はいいからやりなさい!」



昔から器用ですげぇなと思っていたけど、まさか診断から薬作るまで全部できるとは思わなかった。

本人曰く、まだ病気を診ることはできないし技術不足ならしいけど。

いや、すごい早いな。薬作るの。



「ウラガ。怪我人が多いみたいだから、全員にこの薬持たせるように言ってくれる?」


「何の薬だよ」


「切り傷にも打撲にも骨折にも効く塗り薬。あと火傷もかな」



なんだ。その万能薬。



「わたしが渡したら怪しいだろうし…」


「いや、もう今更だろ」



ここの怪我人、何人診たと思ってんだよ。否定もできずに全員従ったじゃねぇか。

もうそいつらすやすや寝てるけどさ。

余所者からの薬がどうとかなんとかって言い張ってたやつはせめて起きとけよ。それこそ気合で。



「ここはもうちょっと医療のこと考えないとだよ。戦場の拠点とは思えないくらいひどい」


「お、おう」


「水も建物も魔法でやり放題なのにどうかと思うよね!ひどい環境を改善できるのに」



いやー……。ね!って言われても、この状況について、オレはどうも思わなかったしなぁ。

医療についても、気合で治せだしな。ここ。オレもそう思うし、そもそも病気もケガもしないし。



「よし。次いこ」


「次?」


「うん。調理場」



ここの人たち、栄養状態もあんまりよくない、とのこと。

こいつ本当にイーリスかよ。


調理場についたら、また怒涛のスピード対応。

一応飯作ってくれる奴はいるんだけど、まさか全員追い出して何するかと思ったら、本当に全員分ひとりで作り始めた。



「うまっ!!!!!!!!」



しかもとんでもなく旨い。

冗談じゃなく、今まで食べたもので一番うまいかも。

外に出て初めて生で食った鶏肉並みに旨い。



「肉ばっかりだしたらだめです。あと調理場の衛生状況も悪いので、病気がはやる可能性があります。それに、いろんなスパイスや調味料をつかわないと。食事は量だけあってもだめです!」


「そんなもん気合で……」


「気合はいいから!!!」



こういう時のイーリスは相当強くなったらしく、大の大人が口も出せない。

なんとなく、逆らえないんだよな。強く言うイーリスには。



「それにしてもうまい」


「ウラガ…どんだけ食べるの?」


「無限に食えそう」



イーリスは手を休めて隣の席に座った。

あんだけ動いたのに疲れた様子は見えない。

黒島で戦ってるやつよりすごいんじゃないか?その無尽蔵体力。



「今日さっそく話し合いあるんでしょ?ウラガもでるの?」


「おう。黒島の会議は自由参加だからイーリスも来いよ」


「じ、自由?」


「どうなっても知らないってやつは参加しなければいいし、意見がある奴は言えばいい。そういう感じなんだよ」



代表者もいない黒島は、言いたい奴が意見を言って、それに賛同するも否定するも自由。

結局賛同者が多かったり否定ができない意見に決まることが多い。


オレはこういう声のでかい奴が勝つ、みたいなのは嫌いじゃない。

どれだけ正しくても押し通す力がなきゃ意味がないからな。



「ウラガはどうしたいの?」


「どう…かぁ」



オレはイーリスを見つけるために戦ってきたし、それは叶った。

だからって、はいさよならってわけには気分的にはないけど、だからってどうするかは考えていない。

そもそも黒島の今後を決める方針に、余所者でここを去ることを決めているオレがとやかく言うつもりもないし、それはどうかと思う。



「んー。いい意見に従う、かなぁ。戦争やめるならそれもいいと思うし、戦い続けるなら最後にどかんとやってやるよ」


「ウラガらしいね」



イーリスの料理をありったけ食べて、やっと休むかと思ったら、イーリスは次に服を作るとか言い出した。

昔から生きるためのことをし続けたとはいえ、生きるのに必要なことを本当に自分ひとりだけで全部できるのか。


すごすぎるだろ。


その間、オレは戦ってただけだ。

毎日、血に濡れて、アガドにいたころとそう変わらない。



「………」



イーリスの成長はオレにはなく、血まみれの変わらない手を見て、情けなくて笑うしかなかった。




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