02
夜中。
ゼロさんとイチカちゃんたち。姿は見えないけど何処かにヤマトもいる。
このメンバーで黒島の町というか砦に来た。
ぐるりと塀で囲われているし、槍とか突き出ている。
そして来た途端、矢でお出迎え。
「おまえら!なにしやがんだよ!!おまえもそんな殺気だしながら堂々と正面から来るな!」
砦から飛び出したのはウラガだ。
「これほどわかりやすい呼び出しはねぇだろ」
「イーリスに何かあったらどうすんだ!」
「そんな可能性1パーセントもねぇよ」
味方の矢が普通に体に受けて、刺さらず地面に落ちている。
…ウラガ。そんなに強かったんだね。
で、やっぱりこの二人を揃えたらこうなっちゃうのか。
うん。想像通り。
「よう、イーリス。さっき会ったけど、ま、久しぶりだな」
「うん。ウラガも。やっぱり無事だったんだね!」
「いろいろあったけどな」
ウラガは記憶のあるころよりも、だいぶ大きくなっていた。
身長も体つきも。
ゼロさんより背も高いし、体も筋肉で太い。
変わらないのは赤い短髪と目。そしてこのかんじだ。
会えるのが当たり前って、堂々としてる。
「入れねぇのか」
ゼロさんは顎で砦を指した。
もう矢を放ったりはしてないけど、沈黙を貫いている。
「入れるだろ。扉あるんだし」
そういう意味じゃないよ、ウラガ。
「まぁ一応要件聞いとくか。イーリスはオレに会いに来たんだろ。おまえは?」
「後ろのこいつら。ここのガキだ。届けついでに用がある」
「なるほどな。わかった。
おい!門開けろよ!オレの客だ!」
大声をあげるウラガ。それに対して再び沈黙。
しばらくすると、大男が飛び降りてきた。
隣でニキチくんが「シシオウだ!」と小声で喜ぶ。
そうか、この人がニキチくんのあこがれの人か。
それにしても、ウラガにしてもこの人にしても。ここ門の意味あるのかな。
「ガレアの客と、後ろの子供は通そう。こいつはだめだ」
まっすぐにゼロさんを指す。
わかっていたのか、ゼロさんの表情は変わらない。
「は?なんでだよ」
「なんでじゃねぇ!おまえと戦って無傷な奴を易々入れれるか!」
「……なんだ?シシオウ。それ全員での総意か?」
頷くシシオウさんとやら。
ゼロさんと違って、まったく隠す気もなく、ウラガは眉を八の字にした。
「おまえら戦争しすぎてビビってんのか?こいつが黒島の人間助けたっていうならまず礼をすべきだろうがよ!」
「びびってねぇ!それで犠牲が出たらどうするんだ、馬鹿野郎!今は一人も欠けれないんだぞ!」
「ならやられる前に袋叩きにすればいい話だろ!対策だとか用心だとかの前にすべきことしろよ、このビビりども!」
「はあ!???」
「仲間助けてくれたんだろ!礼くらいしろよ!こいつがやばいやつだってことはオレにもわかるけど、仲間は大切なんだろうが!
どれだけ強かろうがオレがいる!信じろよ!!それでもおまえら黒島か!!」
いやー、懐かしいな。この有無を言わさないかんじ。
変わってないねー。
声に力があるんだよ。ウラガは。言霊っていうかなんというか。
牢獄から出るときも最後の言葉にどれほど力をもらったか。
「馬鹿だな。脳筋どもは」
ここにそういうのが効かない人がいました。
「あぁ!??」
黒島の人とウラガの声が揃う。
対してゼロさんはいつも通り飄々としている。
「通さねぇなら、通るだけだ。やることはかわらねぇよ」
ゼロさんは単調に、そう言った。
だよなぁ、と言いながらそれはそれは嬉しそうに拳を握るウラガ。
警戒に目を険しくする黒島の人。
奥で砦にいる人たちからも殺気が漂っている。
ああ、また戦闘開始か…。
そう思って、イチカちゃんたち三人組をそばに寄せた時だった。
カランコロン
特徴的な音が静かに響く。
「手前ら。やめときなぁ。ガレアの言うことがもっとも。それに、そいつを止める方がとんでもないことになる」
砦のわきから現れたのは、着崩れた着物をひきずる白髪の老人だった。
腰には一振りの刀。それに肘をかけて、長いキセルを咥えている。
シロウくんが驚く。
クロウさんだと。
「久しぶりだな、死にぞこない。まだ生きてるとはな」
「こっちのセリフだ、死神ぃ。手前の命でも取りに来たかぁ?」
その人の名前はクロウ=ハジメ。
黒島で伝説ともいわれている人だ。