12
イーリスが襲われた。
成長したこいつは、オトナからは女として見えるのか、下卑た顔をしながら腐臭のしそうな手でこいつに触れた。
助けを求められた。
離れててもオレにはわかる。
駆けつけると、 泣きながら助けを求めるイーリスを直接見て、血管が破裂したかと思った。
「ウラガ!?」
戸惑うオトナ。怯えるオトナ。
そりゃそうだろう。ここにいるはずねぇもんな。
知るか、クソ野郎ども。 全員死ねばいい。
今までお前たちは隠れ蓑として必要だった。 数がいれば盾にもなった。 でも、敵になるなら話は別だ。 存在する価値がない。
「ウラガ、おめぇ....!粋がりやがって! ティナ持ちに敵うか!! あぁ!?」
「関係あるかよ!。死んでも殺す…………死ぬまで殺し続けるだけだ!」
調整なんて効かなかった。 全員死ぬまで殺し続けるだけ。 言葉通りに実行した。
途中で汚い言葉を何度も投げかけられたし、 イーリスがやめろと叫ぶ声も聞こえた。
だが、オレは止まり方を忘れていた。ネジのとんだ機械仕掛けのように。
殺す。殺しきれなかったら、もう一度殺す。 動けば殺す。 声をあげるものなら、殺す。
オレは我を忘れていたのだろう。
意識がはっきりしたときには、殴りすぎてオレの拳は割れてるし、 アバラの骨を引き抜いてるし、首は頸動脈ぎりぎりまで傷がいっていた。
イーリスは泣いた。
オレを心配して泣きじゃくった。
少しだけ、やりすぎたかな、と動かない体でぼんやりと思った。
「ウラ、ウラガ!!ごめんなさい!また、怪我を.......。ひどい怪我で.......お願い、死なないでっっ!!」
そんな姿を見て、オレはイーリスに声もかけずに暴れていたことに気付いた。
だめだな。 安心もさせてやれてなかった。
血塗れの手を軽く拭い、イーリスの頭を撫でた。
「泣くなよ、ばーか。オレは強えっていつも言ってんだろうが」
オレはやっとイーリスに触れて笑うことができた。