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破壊の魔王  作者: Karionette
外界編 第二章 外の世界
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18




『異常だとわかっているのか』



んなこといわれても知るかよ

思わねぇことを思えっていう方が無理な話だ



『命というものも重要性を、その体に命を宿しながら何故わからない』



命が大切?笑わせんな

平気で奪いに来て、簡単に奪われるものの何が大切だよ



『命を失う怖さがわからんのか』



泣こうが怖がろうが死ぬもんは死ぬ

俺もお前もそれは変わらねぇだろ

いつか失うとわかってるものに恐怖するだけ無駄だ



『お前は、本当に生物か?』



………クソが


どいつもこいつも俺のことを化け物扱いすんじゃねぇよ!!‼




「………」



あーあ。懐かしいことを思い出したな。

もうあれから五年か。俺もしぶとく生きたもんだな。


起き上がると空は明るく、ボロ家の隙間からは光が漏れていた。とはいえど雨のお陰で日差しはさほどない。雨音はうるせぇけど太陽を浴びなくて済むのはありがたい。



「う、にゅ……」



隣でもぞもぞと丸くなるガキ。

単なる人間には空の旅は厳しかったらしく、この山小屋に着いたときにすぐにこうして寝てしまった。


それにしても、だ。

もっと体伸ばせって。そんなに丸くならなくてもスペースあるだろ。ほんと猫みたいだな



「んにゅ……」



駄目だな。起きる気ねぇ、こいつ。起こす理由も特にねぇからいいけど。

出発するにもこの雨じゃ俺はよくてもこいつが持ちそうにねぇしな。



「もう少し休むか」



とはいっても外はうるせぇし、誰かがいる状態で寝るとか無理なんだよな。

敵意とか殺意がないのはわかってるんだが、まぁ、なんつーか、無理なんだよな。

こんなクソガキがどうあがこうが、俺を殺すのは不可能だし、殺すメリットもねぇのはわかってんだけど。


暇なこの時間を見計らったように、ピアスが揺れる。



「……ロクな話じゃねぇな」



通信機は馬鹿みたいに魔力を喰うもので、本来は高純度の魔石を本体に内蔵させて利用する電池式の魔道具だ。

でかくて持ち歩くには邪魔だし、魔石の魔力が切れれば終わる。

高純度の魔石となるとコスト面も馬鹿にならないこともあり、通信機といえば、大きな街にひとつかふたつ、又は大きな施設や家に設置されるものだ。

持ち歩くとしても、あの盗賊が持っていたような、受信はできても発信はできない半端ものだ。


だが、俺の場合は自前の魔力で補えるから魔石もいらない。小型化にも成功し充電切れにも早々ならない。


ま、作ったのは俺じゃねぇけど。


その代わり使おうとすれば嫌でも魔力が流れるから、察知に長けた奴がいたら面倒なことになる。あの髭ジジイみたいなやつな。


今回は問題はない。魔力もだいぶ回復したところだし。



「なんだよ」


『仕事を頼みたい』


「断る」


『道中のついでに処理してくれ。座標は……』


「聞け。押し付けんな」 


『問題か?』


「めんどくせぇんだよ」


『ふむ……依頼料に加えて望みを聞こう。何が必要だ?』



ちっ。

言わなくても何かが必要ってことがわかってるか。


俺も魔力や相手の表情やしぐさで考えを読みとったりはするが……通話ごしにか。天才はほんと厄介だな。


まぁこの際いろいろと揃えてもらおう。

ずらずらと必要なものを答えた。



「で。最重要なのが、飯と寝場所。あと煙草」


『承諾した。手配しよう』


「それで何の依頼だ?」


『ティナの処理だ』


「………道中のついでに頼むことかよ、それ」


『方法はいつも通りで構わない。まだ宿してから日は浅いそうだ。見た目の判別は難しいかもしれない』


「暴走の可能性は?」


『ないとは言い切れん』



まぁいいか。あってもなくてもやることは変わらねぇ。


そのあと場所や対象の特徴とかを聞いて終了した。



「殺すの?」



こいつも起きたことだしな。



「さぁ。そいつ次第」


「殺さないとしたら、どうするの?」



ベッドに手をついて髪を片側によせ上目遣い。はっ、ガキがなに媚びてんだ。どーせ、そんなつもりはねぇんだろうけど。



「どうするかもそいつ次第だ。ほら、さっさといくぞ。俺は早くまともに寝たいんだよ」


「殺さないってことじゃないんだね?」


「あ"ーー、めんどくせぇな。お前は!」



雨は降るし、日も出ているがかまわず扉を開けた。サングラスをかけ、上着をガキに被せる。俺は濡れたところで問題ない。



「ふ、フードつきに変わってる…」


「多少のデザイン変更は可能」


「べ、便利すぎる…。もう一着作れたらいいのにね」



だから作る系はムリなんだよ。



「でもゼロさん濡れちゃうけどいいの?」


「お前よりは俺が濡れた方がいい。何度も風邪ひくとか馬鹿げたこと言いやがって。弱いやつは黙って言うこと聞け」


「む、むぅ……」


「それに、あとでアレやればいいんだよ。俺は」


「あ、あぁ。アレね」



アレというのは、たぶん一番努力して編み出した技だ。俺の力の中で一番使い道がある。



「アレ……うん。ほんと凄いと思う」



それは、まぁ俺の技なんだからもちろん破壊。全身に付着した汚れ、汗、水気、その他諸々を破壊することに特化させた技だ。基本、外で寝泊まりする俺には人や物を破壊するより必須な技だったりする。


難点は表面が多少痛む。服なんて特に。あと不快感が消えるだけで爽快感はない。


それでも血や埃だらけのままより数倍マシだろ?



「あれ、ちょっと痛いし、髪の毛がぼんってなるからちよっとなぁ……」



で、こいつにもやってみたところ細くて長い女の髪には向かないらしい。実際面白いくらい爆発してた。



「それで……どこにいくの?」


「海辺のでかい町」


「え…!」



顔に怯えの色が滲んでいる。

知るか。


さくさくと道を進んだ。



「ねぇねぇ、ゼロさんはもともと何色をもってたの?やっぱり複数?」


「さぁな」


「わたしはね、赤がいい。火がつかえたら最悪山のなかでも生きていける」


「あー、それいいな。煙草の火種になれ」


「確かに!やっぱり赤は便利だね!」



それにしても、こいつ少し前に首絞められたっていうのにこの調子かよ。平気で隣で寝るし、ついてくるし…。切り替え早すぎだろ。




「町…た、楽しみだね!」



ガキらしく顔をほころばせる。

俺に対する恐怖の色は一切ない。



「………悪かったな」


「え?」



殺す気もないのに死を感じるくらい首を絞めた。わからせるためとはいえ殺す気もない。わからせるってのも俺の我儘で、こいつには知る必要もないし関係ない。


なら、ただ苦しめただけ。俺の行動に意味はないってことだ。



「ゼロさん、今なんていったの?」



聞いてなかったらしい。


もう一回言え?

知らねぇよ。聞いてないこいつが悪い。





体調崩してますので

すこしだけお休みします


半ばには復帰します!


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