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破壊の魔王  作者: Karionette
捜索編 第三章 黒島へ
257/346

06



なぜこの子がオレを助けようとするのか。


子供だ。 痛いだろ?


オレは赤の他人だ。

何も知らないし何もこいつにしてもない。



「泣かないでぇ」



お前が泣いてるのに、なんで泣くなって言うんだ。

なんで笑おうとするんだ。


というか、泣いてたか。

わからない。

オレにはわからない。



「どうしてオレを?」



オレは聞いた。

目をこすりながら杭を引っ張るこの子に。



「だって、悲しいって寂しいって言ってるもん」



子供はさも当たり前かのように、こてんと首傾げてそう言った。



「だからわたしはここにきたんだよ!助けに来たんだよ!」



オレはそう思っていない。

そう思わないようにしてきた。


願ってもないし、今もそれは変わらない。

何年も何十年にも何百年にも。感じる長い時を。


だからオレはその通り伝えた。

しかし子どもは笑う。



「そんなこと言っても、もうわたしが一緒に行きたいって思っちゃったからだめー!」



気を抜かれるとはこういうことなんだろうか。


オレは笑った。 意味のわからないこの子供に笑った。


そして思い出した。

オレがここに居続ける理由がないことを。

もう、守っていたものは失われたのだから。



「ちょっとどいてな」



腕を、杭が刺さっているまま引き抜く。

風穴が空くが思い切りやれば痛くない。 我慢できる。 それにこの穴は貫かれた時点で、どうしようもない。



「だめー!」



子どもが止める。 オレの血で汚したくなくて、来るなと手を振った。

それでも子どもは薄着を引き裂いて血止めをする。 涙は枯れないようで零れ落ち続けていた。



「痛い、痛いね。 ごめんね。 助けられなくてごめんね」



すると体に電流が走った。

これは、力だ。 ここにあるはずのないカ。


全ての生き物の力となるもの。動物も植物も虫も、すべての生き物が必要としている力だ。

もちろんオレにとっても。

傷が治っていくのがわかる。


訳がわからない。わからないが、この際どうでもいい。 脚の杭を引き抜き、長くなった髪をその杭で切り裂いた。



「お前、名前は?」



その子の手をとる。 泣きじゃくる子供は目をこすり、潤んだ翡翠の眼でじっとこちらを見つめた。



「わたしはイーリスだよ」



子どもはそう言った。




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