08
「それで?なんでお前がここにいるんだよ 」
適当に軍人を殴って気絶させ、 縄で縛りながらゼロは聞いてきた。
赤い目になっても、 腕に模様が描かれても、性格とか態度とか。何も変わらない。
「嫌な予感がしたから。 これでも神獣とあがめられることもあった九尾だからね。 そういう感覚があるんだ」
それを銀に相談し、すぐに向かえと言ってもらった。 シルバに言うと同じ感覚があったらしく、いつでもゴルドを走らせる準備をしてくれていたのだ。
それからは夜通しで移動。 ゴルドが走って、疲れたらあたしが走る。 ここまで来るのにさほど時間はかからなかった。
ゴルドは魔獣だし、あたしは雪を溶かしながら走れるから。
ただ、この惨状は想像してなかったし、ゼロの状態も考えていたよりひどかった。
あたしからすると…感覚頼りにいくと、会ったゼロはもう既に堕ちていたし、体が勝手に怯えていた。
たぶん、 ティナ持ちだからなおさら、ね。
でもイーリスが平気でばしばしとゼロを叩いたり、背中を見せたりするのを見て、どうでもよくなった。
幻を破壊して発散するというのは、その場で思いついたもの。 うまくいってよかったけど、 一瞬で幻が消されて作ってを繰り返すのは大変だった。というかぞっとした。
「…………」
「理解できない?」
「まぁな」
虫の知らせ……みたいなものがゼロに通用するとは思ってないけど。
「とりあえず役に立ったでしょ? あれだったら子供たちもルナティクスで保護するし、あたしが連れて行く」
「あ?あの人数をか? 目立つだろ」
「見せないようにするのは得意」
ゼロの不満そうな顔。 我ながらあたしの力は便利だと思うよ。 さっきのイーリスも幻だしね。ああやって自然に出したら魔力が見える人にも気づかれないらしい。
それにイーリスだから。 壊滅的に魔力がないもの。
「じゃ、行こうか」
雪道を早足で進む。
単純に走るスピードはあたしの方が遅いんだけど今は構並び。
珍しく、あわせてくれている。
「リオ。 ありがとう。 助かった」
ゼロの赤い瞳は前を向いたままだ。 まっすぐな声、綺麗な横顔。 最初に会った時と変わらない。
「......... どういたしまして」
あたしの声は震えて情けないものだった。