07
「………要は、お前は、どちらにしろ堕ちかけてんのかよ!
ジジイが叫ぶ。 狐の炎に囲まれて寒くはないにしても元気だな、こいつ。
「堕ちかけてはねぇよ。 進んだだけだし、衝動も今はおさまってる」
「ああん!?」
「俺の破壊衝動。 ちょっとやばかったんだけどな。 何か一つでも殺したり壊したりしたら堕ちた気がする」
「お! ま! え!! ぎりぎりじゃねぇかよ!やっぱ堕ちかけじゃねぇか!」
あの時はやばかったが、俺の破壊衝動は狐のおかげでおさえられた。
何かをぶっ壊したり殺したりしたら終わりそうだった俺は、狐の幻術を相手することで何とか晴らせたのだ。 幻影で殺した人数……万越えしてたけどな。
「それで、だ。 ジジイ。 お前ちょっと捕獲させてもらうな」
「…..は?」
「大丈夫。 痛くはしないから。 あたしに任せて」
「.........いやいやいや。 意味がわからねぇよ」
「お前が軍に戻ったら俺がティナ堕ちしてねぇって報告するだろ? だからそれを遅らせるためにな。
お前がいなくなったら流石に軍は探すだろうし、今日居た兵は、お前が何言おうが俺がティナ堕ちした扱いで進めていくだろ?たぶん」
「……」
アルテマには俺の生存はバレた。
で、俺の生存がバレたとしても、軍や兵が「闇の帝王のティナ堕ち」の噂を広げてくれれば、破壊行為後にティナ堕ちした可能性がでてくる。
情報が乱れれば、俺も動きやすくなる、 はずだ。
だからこいつが戻って、嬉しそうに「闇の帝王は生存」と報告されたら困るわけだ。
ま、もともとイリスとガキに矛先がいかないならそれでいいと思ってたんだけど、ジジイがここに来て、狐がここにいるなら話は別だ。うまく情報操作する。
「まぁ、構わねぇよ。 ゼロと交戦したけど捕まったで言い訳つくし」
「あんた軍人辞めた方がいいんじゃない?」
同感だ。
こいつの何処が軍人に向いてるのかが未だにわからねぇ。 野党の方が面構えも向いてる気がする。
それに街が壊れたことも何も言わねぇし。
「でも腐っても己は軍人だ。抵抗はさせてもらう。 そこのキツネのねぇちゃんには罪状はないだろうけど、 己がゼロと対面して何も起きませんでした、は通らねぇもんな」
と言って、一気に最高潮の魔力が漂う。
やれやれ。まぁそうなるよな。変に真面目なとこあるからめんどくせぇ。
で、そうなったときのためのこいつだ。
「......ジルおじさん。 戦うの?」
「いや。 戦いません。 ラブアンドピース」
イリスの上目使いはジジイには効果的ならしい。