09
目が覚めると洞屋の中だった。
空気はぽかぽかして暖かい。
ずきりと指先が痛い。 いや、思ったより全身が痛い。 指先より全身が痛い。
え、思ったよりすごく痛い!
でも生きてるってことだ。
「起きたか」
そこにはゼロさんがいた。 相も変わらず、 だるそうな顔したゼロさんだ。
「助けてくれたの?」
「助けてもらいたかったんだろ?」
「うん。 ゼロさんなら間に合うと思った」
雪崩にのまれるのが怖くなかったわけじゃない。 でも火をあげたら、空を燃やしたら、絶対にゼロさんがきて助けてくれると思った。 他人任せと言われてもいい。 来ると思ったんだ。
「無理しすぎだろ」
「ゼロさんに言われたくない」
「お前は人間だろうが。 ティナ持ちの俺と一緒にすんな」
だって、今も服はぼろぼろ。
体も包帯だらけじゃん。 服治す余裕もないんでしょ? その様子なら。
「それに最後とっさに木たちを呼んだし、わたしも無理ばっかしてるんじゃないよ」
「あー 木ね。 全部破壊したな」
「...... ごめんね、木さん。 わたしは酷いやった」
「だな。 力を与えて壊させるとか……」
「ううう」
同感です。
「そうだ。子供たちはみんな無事?」
「怪我人は数人いるが、あの2人が頑張ったみたいで死者も攫われた奴もいねぇよ」
「そっか……。 それで、サンロくんは?」
「もうここにはいない。 アルテマの拠点があったが、そこは潰しといた。 殲滅はできなかったのが、あとあと面倒だけどな。
あとは銀に探させる。 黒髪黒目の6歳のガキなら情報も手に入りやすい」
「...... アルテマ。 攻撃できたの?」
「ああ」
なんだ。この力ないゼロさん。めんどくさがりの境地はこんなになるのか。もう指一本も動かさないじゃん。 ソファーで寝そべったまま微動だにしない。
いつもならアルテマに攻撃できたこともう少し喜びそうなのに…。
「今、俺の体は俺のじゃねぇから」
「.…はい?」
「今はティナに持ってかれてる」
「はい!???」
がばっと立ち上がった。 痛いけど、痛みも吹っ飛ぶくらいの爆弾発言だ。
ティナに持ってかれてる? なにそれ! 呑まれてるってことよね!?
「違う。一時的にそうなってるだけだ。 俺も暴れないようにするので精一杯」
「え? あっと、魔力いりますか!?」
「魔力があっても止まらねぇから。 魔力が少ないからなってるんじゃなくて、やり方がまずかった」
「何したの?」
「言いたくない」
そう、ですか。 無理強いはしないよ。
「近くにいてくれ」
「珍しいね。そんなこと言うなんて」
「俺の意識がとびそうになってたり、 俺じゃないって思ったらとにかく呼べ」
「理由か物騒でした」
「当たり前だろうが。 じゃないと頼むかよ、こんなこと」
にやりと笑うゼロさん。 いつも通りを作ってるみたいだ。
無理しなくてもいいのに…..。
よし、仮面の女の話はまた今度にしよう。
体が痛いのも後にしよう。
「じゃ、 ずっと名前呼んでるね」
「うるせぇから止めろ。 ストレスで死にそう」
「そんなんで死ぬわけないじゃん。 天下の破壊神さまが」
「俺にも自殺という素敵な死ぬ手段があってな」
「素敵とかやめてください」
それからわたしはずっと続けた。 真っ黒になったゼロさんの腕が急に襲いかかったり、ゼロさん自身を傷つけようとしたりした。
けど、 それでも話し続けていた。
その時は夜が何度あけたのかもわからなかったけど、ゼロさんに引っ張り起こされたのは3 日後の朝だったらしい。
遅刻しました!