08
あ?
剣をおろし翼を広げて空に飛びたつ。 それを止めようと風の重圧が来た。
もう足止めに付き合ってられるか。
一気に覚醒状態となり、目下の敵と周りの空気をすべて破壊する。 血が噴き出すように地面から上がるが、それでも動く奴がいる。 重力の操作で、二度と立ち上 がれない体へと砕く。
それでも。それでも敵は湧く。
「怠惰」
自分の体を破壊する。 もう邪魔はさせない。 実態を失った体で、そのまま空を駆けた。
視線に炎があがる。
やっぱりかよ。 そんなことだろうと思った。 まだアルテマに俺が生きていることが知られたくはなかったが、この際仕方ねえ。
俺は限界まで翼に魔力を流し速度を上げる。
数分もかからず、目的の場所へ迫り着くと、下は雪や土砂で埋まっていた。
あの洞窟すらない。
「イリス!」
魔力を探る。 あのガキ3兄弟を探すのは楽だ。 洞窟の中で生きてる。 一匹は…あそこか。 うまく魔法を使って逃れたか。
とりあえず、洞窟の雪を破壊し、入り口をかき分けると疲労困憊の黒兄弟が飛びついてきた。
「先生! イリスねぇが!!」
「イーリスが雪に・・!」
「ああ、わかってる。 木をこんな馬鹿げた形にできるのはいっだけだ」
相当の魔力を吸いこんで使ったのか。樹齢千年を超えてそうな木が、いくつも雪から覗いていた。
兄弟2人に末っ子の場所だけ教え、魔力を探るもまったく感じない。 ということはあいつは魔力をすべて使い切ったわけだ。
あの馬鹿が。 少し残しとけよ。
さすがに雪に埋まったあいつの少なすぎる魔力は見えない。 適当にやって見つかるときには窒息で死んでる可能性が高い。
考えろ。
雪のみ破壊する?それで土砂に埋まったら死だ。 ということは命以外を破壊する? なんだよ、その精密作業。 あいつの核に穴開けたとき以来か。
「ゼロ……」
「うるせぇ」
ダメだな。時間のリミットが来る。 太陽がきついとか甘えてられねぇのはわかってるけどめんどくせぇな。
「ガキども。 無事な奴は上から雪かき分けてさがせ。 俺は下から探す」
ゆっくりと闇を広げる。
俺は命の有無について力に頼りっきりなところがあるから、間違えてあいつも壊すかもしれない。
だが、このままだとあいつが死ぬのは確実ならやるだけやるしかないだろ。
多少無理してでもな。
武器の形が崩れる。
俺はそれを地に広げた。