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破壊の魔王  作者: Karionette
復興編 第五章 ルフ
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カリタは、麻薬だ。 ということは所詮、薬。

俺の体はそういうものの耐性が異常に高い。実際、体に効いた薬は今までなかったんだが、 ティナに作用するカリタは少し色が違うのだろう。


まぁ、とにかく。


体に入った(もの)は、 自分で殺すしかない。 ティナも荒れてるし、 勝手に体動くし、妙な心地良さがあるし。

呑まれてしまえば俺の意思が弱まる。 だから、寝る。


寝てしまえばティナも動けないだろう。


問題はここは敵地で、俺は俺を守る術がないってことだけど…. もういいや、ほんとめんどくせえ。

脳が動かないってのはこんなに不快なのか。 色々とどうでもよくなる。なんとかなるだろ。 流石に死ぬ寸前には起きるだろうし。


目を閉じる。


完全に意識は切れない。

切った瞬間どうなるかわからないからだ。

だから、体と意識を切り離し、それで眠る。



<お前は何だ>

<名もなく、血筋もなく >

<慕う者はいても心を許さず>

<過去の記憶さえなく>

く壊し、壊し、壊し続ける>

<お前は何だ>


俺が何かだと?

それを知るために生きてるんだろうが。


<他者を犠牲にして>

<命を奪い、破壊の限りを尽くす>

<それが望みか>

<それが意思か>

<それがお前だというのか>


やりたいようにやるだけだ。

やりたいようにやろうと思ったら壁が多い。 壊さねぇと進めねぇんだよ。


<それはどこまでも悪魔らしい>

<手段を択ばず己の目的のみのために>

< 他者の死も苦痛も気にも留めない>

<どこまでもどこまでも悪魔らしい>

<その手の血はお前自身で手にかけたものか?>

<悪魔のそれではないのか?>

<そもそもお前の意思とはなんだ?>

<お前がお前の意思だと思える所以(ゆえん)はなんだ? >

<生まれた時から悪魔が巣くう体だ>

<お前が悪魔自身ではないのか?>

<その耳に届く声が本当のお前なのではないか?>


<どうだ>

<お前はなんだ? >

<なんだ?なんだ? なんだ? なんだ? なんだ? なんだ? なんだ? >



「っっっるせぇ!!!」


「ふぁっ!??」



宝石を突っ込んだような眼は驚きで揺れていた。



「…イリス」


「だ、大丈夫? うなされてたけど」



残った片目で辺りを見ます。 山小屋か、何かの隠れ家か。

イリスが ぶちまけた水が床にシミを作っていってる。


いつも通り気配を探ろうとすると、ぶん殴られたかのような頭痛が 走った。



「っ!」


「ちょちょ! 無理しないで。 今水持ってくるから」



バタバタと走り去る音をどこか遠くで聞きながら、ベッドに横になった。

頭が痛い。

まだ片目も腕も戻ってないらしく、几帳面に包帯が巻かれていた。

意識飛ばしすぎたらしいな。 ここが何処かもわからねぇとは。



「はい」



······· おいおい、 まじか。


いつの間にかそこにいたイリスにも気づけていないらしい。



「水だよ。 血が足りてないから、お酒と煙草は禁止。 ぐらぐらする かもしれない」



反発したいところだが、ここは素直に従っておこう。 今は、人間としての感覚すら怪しい。



「何処まで覚えてる?」


「記憶に欠如はねぇよ。 ルフを破壊して、体も言うこと聞かねぇから、寝た」


「寝た後のことはさすがに覚えてないってことね?」


「ほぼ完全に意識飛んだらしい」



不本意だが。



「そうだよね。 あれから、カロルに案内されてここに来たんだ。 本当は教会というか神関係のところみたいなんだけど、それはカロル とリオが徹底的に壊してくれたから大丈夫だよ。 ここなら、まさかゼロさんがいるなんて思わないだろうって」



ま、だろうな。


神を祀る建物は、山の中にも街の中にもいくらでもあるが、俺はそういった関係のものには近寄れもしない。

だからこそここにいるとは思われないだろう。



「闘技場はカロルの部下さんが暫く管理して清掃もするって。 あそ こにいた闘士たちはカロルの部下としてルナティクスで働いてくれるって」


「ああ」


「リオは電池切れで寝ちゃってる」



あいつは相当きつかっただろう。


闘技場自体も、人間のことも、どれもティナが 疼いてもしょうがないことばかりだ。


あれで、あそこまで平静を保てるなら、あいつを破壊する機会はなさそうだ。



「ゼロさんはどう?体とか、そのカリタとかティナとか」


「よくわからねぇ。 まぁ死にも堕ちもしないだろうよ。 頭が働かねぇのと……グラグラするだけで」


「でも…すっごいうなされてたよ」



うるせぇな。 俺にもそういう時だってあるんだよ。 たぶん。



「酒飲みたい」


「だめ」


「煙草吸いたい」


「だめ」



・・・なんだ、こいつ。 どの口が言うんだ?あ?酒も煙草もお前が作ったんだろうが。



「ぶ!!!」



無理矢理胸倉をつかみ、緑の目をのぞき込む。

月明かりに照らされた白い首筋。


乾く。



「ゼロさん!??」



首筋に唇を這わせる。

舌で触れると脈拍を感じた。


乾く。


乾く。


片腕で引き寄せ、翼で包み込む。

奪われないように。 俺の餌を…..。


··················· なんだこれ。

で。 なんだよ。 その視線。



「ぴゃっっっ!」



天井を拳で貫いた。イリスの悲鳴と、何かのきゃっという悲鳴とやかましい物音が一緒に落ちてくる。

棺からはみ出した赤い髪がぶるぶると動いていた。



「….... ルナ!??」


「わわわわわ妾です!!!」



蹴り開けた棺の中身はどこぞの大馬鹿野郎だった。



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