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盗賊は、主に盗品を売り払うことで利益を得る。
空にいれば空賊、海にいれば海賊と、呼び名は変われど、本質は変わらない。全て罪を犯して生きる集団だ。
もちろん、軍や国の兵に討伐される対象で、他にも賞金稼ぎと呼ばれる者たちからも狙われており、その数は減ることはあれど壊滅することはない。
イーリスは盗賊というものを見たことがない。しかしアガド牢獄にいたものたちはそれを超える凶悪犯だ。歩みに緊張はあっても恐怖はなかった。
「でも……ひとりは、やっぱり怖いな」
イーリスはあの後、眠るゼロを置いて宿を発った。アガドに残した二人を気にして先を急いたのだ。
腰には勝手に持ってきたゼロの短剣を二本差し、依頼人からもらった靴を履いて、目立つ髪は結い上げて帽子で隠している。
そして持ち前の素早さで教わったアジトまで向かう。
「うぅー、結構多いな……」
巡回する見張りや罠。イーリスはそれを掻い潜る。
野生化した人間のなかで生きていたイーリスにとって、それは常に行われることで、罠に関してはどちらかといえば仕掛ける側であったため回避は難なく行うことができた。しかし、魔法という未知数のものは警戒しなければならない。
だから、イーリスは十分すぎるほどに警戒しながら進む。
だが、だれにも見つからずに潜入するには限度があった。
「1、2……、3人か」
廃れた建物には見張りが3人。屋根に二人と入り口に一人だ。
この厳重な警備。ここが盗賊たちの拠点であるとイーリスは確信をもった。
「思ったより小さい……村の若い人全員が捕まったってことは地下が広いのかな」
売り払われてしまったのかもしれない。そうは思ったが、考えないことにした。だからといってこれから行うことに変更はないからだ。
「確か、ここらへんにあるって言ってたな。秘密の入り口……」
あの建物はそもそも町の避難場所ならしく、食料などの備蓄もそれなりにありいくつもの脱出口があるのだという。長く放置したせいで使えない出口もあるが、教えてもらった1つは最近整備されてできたところで、絶対に利用できるようだ。
「あった。これだ」
目印は皮の剥けた木。夜で普通なら見えないのだろうが、夜目のきくイーリスには問題はなかった。その麓にある石を転がし、木の板で閉められた地下に通じる入り口を発見する。イーリスは音をたてないように気をつけて滑り込むように中に潜り込んだ。
「!?」
人がいる。かち合ってしまった。
一瞬で判断したイーリスは、着地よりも早く剣を抜き、小さな体を回転させて伸ばした手を切り裂いた。着地と同時にあがる悲鳴。狭い通路の奥にもう一人の存在を確認し、股の下をくぐり、鳩尾めがけて飛び蹴りをくりだした。そのまま即座に来た道を戻り、傷口を押さえたひとりに向き直り、短剣の鞘で胸を突いた。
「かはっ…」
「もういっちょ!」
姿勢を崩したところで、脳天めがけて短剣の鞘を振り下ろす。小気味良い音をたてて、男は崩れ落ちた。
イーリスは息を整える。緊張で胸が張り裂けそうだった。
「……でも、うん。いけるかもしれない」
アガド牢獄では弱者であった自分だが、ここでは渡り合えている。武器を構えるよりも傷を優先する。そんな隙だらけな敵はアガドにはいなかったのだ。
シルクの言った通りだ……!
自信をもったイーリスはぐっと拳を握る。そして、暗い道を進むのだった。




